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テリー主将降格&カペッロ監督辞任。
災い転じて新生イングランドが誕生!? 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2012/02/17 10:30

テリー主将降格&カペッロ監督辞任。災い転じて新生イングランドが誕生!?<Number Web> photograph by AFLO

次期主将候補は、ジェラードかパーカーが有力。しかしカペッロが信頼を寄せていたように、テリーのキャプテンシーは絶大。後任は求心力を発揮することができるのか

南アW杯後にカペッロを更迭しなかった協会にも非が。

 むしろ、協会に非があるとすれば、2年前の時点で指揮官の更迭に踏み切れなかったことだろう。カペッロとは、失敗に終わったW杯南ア大会後に袂を分かっているべきだった。

 決勝トーナメント初戦でのドイツ戦惨敗を待つまでもなく、国内では、苦戦したグループステージの段階から、やはり監督はイングランド人でなければという意見が高まっていた。続くEURO2012予選にしても、グループ首位で突破はしているが、内容が評価された試合はほとんどない。試合後の会見では、代表の出来に不満な母国記者陣の棘のある質問を、カペッロが英語力不足を盾にはぐらかす問答が繰り返された。南アで国民に期待外れの烙印を押されたカペッロに対し、解雇ではなくEURO2012までの続投という決定が下されたのは、協会が、代表監督では世界最高の600万ポンド(約7.2億円)という年俸に伴う巨額の違約金と、後任候補の不在を恐れたからに他ならない。

 こうした過去を考えれば、今回のカペッロ辞任はイングランドにとって、大会4カ月前とはいえ大騒ぎするほどのショックではない。

 たしかに意外ではあった。EURO2012は、大会後に、退任だけではなく、監督業引退を仄めかしていたカペッロにとって、キャリアの締め括りとなるはずだった。最後の大仕事を放棄することなど、一流監督としてのカペッロのプライドが許さないと思われた。

後任候補に挙げられる待望の母国人監督の名は?

 だが同時に、心の中で密かに辞任を願っていた国民は少なくなかったはずだ。

 事実、カペッロがテリーに対する協会の決定を批判すると、デイリー・メール紙のように、「消えてくれ」との見出しで退任を促す報道もあった。現在のイングランドには、イタリア人監督の後釜として、待望の母国人監督が存在するのだ。

 この3月で65歳のハリー・レドナップは、カペッロと同世代のベテラン監督。国際舞台での実績はカペッロに遠く及ばないが、国内での人気と評価は“代表前監督”を上回る。レドナップ率いるトッテナムは、初出場の昨季CLでベスト8進出を果たし、今季のプレミアリーグでは半世紀ぶりに本格的な優勝争いを演じている。選手のモチベーションを高め、最大の力を引き出す腕前は、ウェストハム、ポーツマス(いずれも現2部)といった低予算クラブでプレミアを戦っていた頃から折り紙つきだ。戦術面でも、カペッロ体制で採用された4-4-2、4-1-4-1、4-3-3といったシステムは、レドナップのトッテナムでも採用されている。

 奇しくも、カペッロ辞任の数時間前に、5年越しの脱税容疑に無罪の判決が下り、協会がヘッドハントに動く上での道義的な問題も解決された。ガーディアン紙によれば、「天の思し召し」となる。

【次ページ】 新旧エースのルーニー、リネカーもレドナップを後押し。

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