野球善哉BACK NUMBER
ダルビッシュ流出はNPBの危機!?
MLBスカウトが語る日本球界の病巣。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/02/05 08:01
1997年にはテキサス・レンジャーズのテストに合格し、2Aで実際に投手として活躍したこともある小島圭市氏。巨人、レンジャーズ、中日、興農ブルズ(台湾)とプレーしており、日本球界と海外の野球界の両方を知る、数少ない識者である
旧態依然の指導法が日本人選手の進化を鈍らせる!?
「僕が現役時代を日本で過ごしていた時は、常に何かの疑問を感じながらプレーをしていました。何がおかしいのかは分からなかったが、アメリカに行ったことで、その謎がすぐ理解できた。何を理解したかと言うと、指導法の違いです。もちろん、僕が日本で携わってきた方々の指導が全て悪いというわけではありません。むしろ、アメリカがなぜスゴいのかが分かった、ということなんです。『失敗していいんだ、打たれて良いんだ』というのがアメリカ。これがメジャーの指導法なんだな、と。
その後、スカウトとして日本の野球界とも関わってきましたが、11年間継続して見てきても日本の野球がほとんど何も変わっていないんですね。いまだに、罵声や怒声をグラウンドで響かせ、特に根拠もない厳しいだけの練習をさせている。投げ込めばコントロールがつく、走り込めば体力がつくと迷信のように思っていて、選手が怪我をすると『お前が悪い』と、指導者たちはいまだに言っている」
昨今の日本人選手の評価はメジャーで著しく低下している。
一昨年の西岡剛(ツインズ)や岩隈久志(一昨年はポスティング移籍を目指したが契約成立せず)に始まり、今年の川崎宗則(マリナーズ)や青木宣親(ブルワーズ)、契約が成立しなかった中島裕之(西武)などの厳しい契約内容が如実に証明している。それらはすべて、長い間日本の野球が変革することを恐れてきた結果の、技術の遅れが原因なのではないかと睨んでいる。
「(メジャーの各球団が)日本人というだけで獲得に動くようなことがなくなり、むしろ正当な評価をするようになった」(小島)という現状認識は正しいと思う。
「日本の現場を見ていると、このままじゃダメだと思う」
とはいえ小島は、現状の日本球界をただ批判したいだけではない。むしろ逆で、日本の野球界がその指導法を改善すれば劇的に変わる可能性があると信じている。
「日本人の選手がアメリカに行って泣かず飛ばずのまま帰ってくるのは残念だと思うし、スカウトという立場でも、日本人選手が軽視されるのは嫌なこと。指導の方向性を間違わなければ、(メジャーで活躍できるほどの)スーパースターはでてくるし、投手であっても、野手であっても、日本人はメジャーで十分に戦える。ただ、スカウトをやっていて日本の現場を見ていると、このままじゃダメだろうなとも感じていることも事実。ただ、そんなことを言っているだけでは、何も変わらない。だったら、アクションを起こそう、と。誰もやらないなら、自分がやろうと」