野ボール横丁BACK NUMBER
斎藤佑樹のラストイヤー始まる!!
投手王国・早大野球部に贅沢な苦悩。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKYODO
posted2010/04/07 12:50
早大野球部には一流の投手が多すぎる!?
そんな斎藤の成長の軌跡が目に焼き付いていたからだろう。早大に入ったときから、懸念はあったのだ。一級の投手が、居すぎるな、と。
3年生に須田幸太(JFE東日本)。2年生に松下建太(西武)。そして同級生に福井や大石。みんなドラフト候補生だった。
そのせいで、斎藤は1年春からエースとして先発しながらも、6回前後で早々に交代させられてしまうことが多かった。ときには1点も取られていないのに試合中盤で代えられてしまうことさえあった。
もちろん酷使しないという意味では、それでよかったのだろう。また、早大には勝たなければならないという宿命がある。斎藤よりもいい投手がいるのなら、どんどんつぎ込むべきだ。
大学3年間で43試合に先発。完投はわずか8試合!!
だが、高校時代の投げれば投げるほど自分の中に眠っていた才能を目覚めさせていった斎藤を思い出すと、さみしさがないわけでもない。
斎藤は大学3年間でこれまで43試合に先発している。うち、完投は8試合しかない。ちなみに最高投球数は142球だ。しかも完投しているのは、いずれも得点差が開いているときばかりなのだ。最小でも4点差なのだ。
その一方、3点差以内で勝ち星がついたときは、ほとんど大石のリリーフをあおいでいる。早いときなど6、7回からマウンドを譲ることも珍しくなかった。
つまり、大学にきてからの斎藤は、本当に緊迫した展開の中で一人で投げ切ったことがない。高校時代のような極限状態、剣が峰に立たされたことがないのだ。それが大学3年間の斎藤の成長度合いに表れているような気がしてならない。
もちろん個人の育成よりも、チームの勝利が優先されるべきだ。大石という絶対的なストッパーがいるのなら、それを使わない手はない。
斎藤に要求されるのは周囲を圧倒する“極上の投球”。
今シーズンも状況は変わらないだろう。斎藤がそこそこいい投球をしたところで、点差が少なければ交代させられてしまう可能性の方が高い。そんな中で、果たしてどこまで自分を磨けるのだろうか。
やはり、たとえ得点差が詰まっていようとも、この試合は斎藤に任せる、監督にそう思わせるような「そこそこ」ではない、極上の投球をするしかない。そして、ラストイヤーである今年は、そんな斎藤を一度ではなく何度も見てみたいものだ。