スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
大型契約と肥大する体重。
~フィルダーへの巨額投資を考える~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2012/01/29 08:01
今オフFA選手の超目玉だったフィルダー。タイガースは父の古巣でもある
ベーブ・ルースの若い頃は、ひきしまった体型だった。
と書くと、反論の声が聞こえてくるような気がする。
ベーブ・ルースはどうだ?
ハーモン・キルブルーはどうだ?
バリー・ボンズはどうだ?
フランク・トーマスやジム・トーミはどうだ?
という反論である。
なるほど、彼ら大選手も巨漢にはちがいなかった。だが彼らは、最初から肥っていたわけではない。
トーマスやトーミは比較的最近の選手だから記憶に新しい方も多いだろうが、ルースやキルブルーにしても、若いころはひきしまった体型を誇っていた。若き日のボンズにいたっては、鋼を縒り合わせたようにほっそりとした身体つきをしていたではないか。
打撃成績は文句なしだが、守備には不安が残る。
では、すでに肥っているプリンス・フィルダーは、早期引退の弊をまぬかれうるのだろうか。
2012年5月、彼は28歳になる。大リーグでの主力としての実働期間は6年ほど。その間の平均本塁打数は38本で、平均打点数は108。立派な数字だ。7年間の通算で記録した打率/出塁率/長打率の並びを見ても.282/.390/.540と文句なしの数字を残している。要するに、フィルダーは一流の打者なのだ。
が、守備面に眼を転じると、不安は拭いがたい。プーホルス、エイドリアン・ゴンザレス(レッドソックス)、新たに同僚となるミゲル・カブレラ、マーク・テシェイラ(ヤンキース)などは、明らかに彼よりも一塁守備が巧い。
にもかかわらず、フィルダーは一塁の定位置を獲得することになるはずだ。となると、カブレラは'07年まで守っていた三塁に転出する。もちろん、フィルダーをDHとして起用する選択肢もあるのだが、そうすると、いまは故障中だが、昨年DHとして四番を打っていたビクター・マルティネスの処遇がややこしくなる。