スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
大型契約と肥大する体重。
~フィルダーへの巨額投資を考える~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2012/01/29 08:01
今オフFA選手の超目玉だったフィルダー。タイガースは父の古巣でもある
世の不景気などどこ吹く風、といわんばかりに、またもや巨額の金が飛び交っている。
大リーグの話だ。
FAのアルバート・プーホルスがエンジェルスと10年総額2億4000万ドルの契約を結んで世間を驚かせたのはつい先日のことだが、今度はこれまたFAのプリンス・フィルダーが、それに劣らぬ大型契約を成立させた。
迎え入れたのはタイガースだ。
契約は9年総額2億1400万ドル。総額2億ドル以上の金が動いたのは、Aロッド、プーホルスに次いで史上3人目となる。
フィルダーにつきまとう巨漢選手のジンクス。
しかし、フィルダーにそれだけの価値があるのだろうか。
最大の不安はあの体型だ。177cm/124kgという数字は、とてもアスリートの身体つきとはいいがたい。父親のセシル・フィルダーも太っていたが、身長は息子よりも10cmほど高かった。
セシルの全盛期は26歳から32歳までの間だった。この間の平均本塁打数は年間37本。立派な数字だが、33歳からは急激な凋落がはじまり、35歳で引退を余儀なくされた。
セシルに限らず、巨漢選手の凋落は早い。'60年代にオリオールズで主軸を打ったブーグ・パウエル(一塁手)、'70年代にフィリーズで活躍したグレッグ・ルジンスキー(左翼手)、'80年代にツインズの一塁を守ったケント・ハーベック。彼らはすべて、判で捺したように33~36歳で引退した。
そういえば、'90年代にはレッドソックスの一塁手モー・ヴォーンがいた。一時はMVP候補に挙げられるほどの強打を誇ったが、100kgを超える体重はやはり負担になっていたのだろう。35歳のときの故障が原因となって、この選手もあっけなく現役を退いてしまった。