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マッチメイクのシビアさが生んだ、
『DREAM.13』“熱気”と“弛緩”。 

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph bySusumu Nagao

posted2010/03/26 10:30

マッチメイクのシビアさが生んだ、『DREAM.13』“熱気”と“弛緩”。<Number Web> photograph by Susumu Nagao

フェザー級タイトルマッチは互いに消極的な戦い方が目立ったが、テイクダウンを狙い続けたビビアーノ・フェルナンデスが僅差の2-1で判定勝ちし、初防衛に成功

ベストバウトも“凡戦”も、狙いは同じだった。

 ただし、大会の前半と後半に、明確なコンセプトの違いがあったわけではない。あらかじめ「KO・一本が期待できる試合」と「判定でも仕方ない試合」として組まれたわけではないのだ。

 たとえば、大会ベストバウトの呼び声が高い菊野克紀vs.弘中邦佳戦(菊野の1RKO勝ち)とフェルナンデスvs.ハンセンは、同じコンセプトで組まれている。タイトルマッチとノンタイトル戦という違いこそあれ、選手にとって最も厳しいシチュエーションを用意する、という狙いは一緒だったのだ。

 菊野vs.弘中は、青木真也、川尻達也に続く“ライト級第三の日本人”決定戦。負けた選手は、タイトル戦線で大きく後退することになるリスキーなマッチメイクだ。フェルナンデスvs.ハンセンも、何よりもシビアさを重視したマッチメイクだった。王者フェルナンデスの初防衛戦の相手が、一階級上のチャンピオンだったハンセンであること。ハンセンにとっては、フェザー級転向一戦目がタイトルマッチであること。トップ選手が演じる容赦のない潰し合いという点で、この2試合は共通していたのだ。

 にもかかわらず、菊野vs.弘中は観客の腰を浮かせ、フェルナンデスvs.ハンセンは踵を返させた。なぜこうなったのかは、おそらく誰にも分からない。『DREAM.13』は、興行をデザインすることの難しさを感じさせる大会だった。

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