濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
マッチメイクのシビアさが生んだ、
『DREAM.13』“熱気”と“弛緩”。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2010/03/26 10:30
フェザー級タイトルマッチは互いに消極的な戦い方が目立ったが、テイクダウンを狙い続けたビビアーノ・フェルナンデスが僅差の2-1で判定勝ちし、初防衛に成功
リングアナウンサーが判定を読み上げると、少なくない数の観客が席を立ち始めた。3月22日、横浜アリーナで開催された『DREAM.13』のメインイベント、王者ビビアーノ・フェルナンデスと挑戦者ヨアキム・ハンセンによるフェザー級タイトルマッチを前のめりになって観戦したファンは、決して多くなかったのである。会場のムードを率直に表現するなら「あぁ、やっと終わった」というものだった。
フェルナンデスとハンセンが繰り広げた攻防は、タイトルマッチにふさわしいものだった。階級を落としてタイトルに挑戦した前ライト級王者のハンセンは、リーチを活かしたパンチと接近してのヒザ蹴りで圧力をかける。フェルナンデスは右のビッグ・ショットを狙いつつ、要所でテイクダウンに成功。しかしハンセンは、柔術世界王者の寝技から巧みに脱出してみせた。つまりは一進一退。互いが持ち味を出そうとし、それを潰し合うレベルの高い闘いだ。判定結果は2-1。大接戦の末に、フェルナンデスが王座防衛を果たしている。
観客が感じたフラストレーションの原因。
しかし、それは見方を変えれば“決め手を欠く”展開でもあった。ハンセンは打撃で攻め切れず、フェルナンデスは寝技のテクニックを存分に発揮することができない。試合が長引けば長引くほど、会場の熱は下がっていった。ファンが見たかったのは、やはり“壮絶KO”であり“華麗な一本”なのだ。
加えて、メインイベントに至る流れもよくなかった。休憩明けに行なわれたKJヌーンvs.アンドレ・ジダ戦はワンサイドでヌーンの判定勝利。ジダは何もできず、ヌーンは攻め込みながらも倒しきれないという、フラストレーションのたまる試合だった。
続くセミファイナル、ジョシュ・バーネットvs.マイティ・モー戦はバーネットがアームロックで一本勝ちを収めたが、ローブローで長時間の中断を余儀なくされている。リング上に選手がいるのに何も行なわれていない時間が長引けば、会場の雰囲気が弛緩するのは当然だ。まして今大会の前半戦4試合では、3つのKO・一本決着が生まれている。観客は否応なしに前半と後半を比べ、その落差を感じてしまっていた。
「なんかグダグダになっちゃったな」
「次こそKOを見せてもらわないと」
そういうムードの中では、フェルナンデスとハンセンが見せたハイレベルな技巧戦が受け入れられるはずもなかったのだ。観客が何よりも感じたのは、試合の長さそのものだったのだろう。