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ハミルトンが韓国GPで6戦ぶり表彰台。
なのに……笑顔が無かった理由とは?
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2011/10/21 10:30
「こういうハードなレース展開のプレッシャーに耐えることはF1王者の証明だと思っている。今日は、そのことを示すことができた」とレース後にコメントしたハミルトン
「ルイス、お願いだから、これから私が行う質問を理解し、そして返答してほしい。あなたは今日の予選でポールポジションを獲得し、ライバルチームの17戦連続PPを阻んだというのに、笑顔がありません。むしろ、とても悲しそうに見えます。これは、ここ数戦、周囲からあなたへ向けられた批判が関係していますか」
これは韓国GPの予選直後に開かれた記者会見中に、今シーズン初めてポールポジションを獲得したハミルトンに向けられた質問である。
F1では予選と決勝レースの後、上位3人は必ず記者会見に出席しなければならない。最初に国際映像のテレビ用。次に通常の記者会見。そして最後に各国のテレビクルーたちが待っているミックスゾーンでの受け答えである。この会見は2つ目の通常の記者会見で、トップ3のドライバーたちと記者が明るい雰囲気の中で行われる。
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ところが、韓国GPの予選後の記者会見は、いつもと少し様子が違っていた。
ポールポジションを獲得して、中央に座るハミルトンに笑顔がなかったのだ。
今季初のポールポジションにもハミルトンに笑顔が無かった理由。
今年のハミルトンは、そのアグレッシブなドライビングが仇となって、例年以上に接触事故が多いシーズンを送っている。
第16戦韓国GPが行われる直前の2戦、シンガポールGPと日本GPではマッサと接触。ドライブスルー・ペナルティも科せられていた。周囲からの批判の声が高まる中で、迎えたのが韓国GPだった。
そして、その予選でハミルトンは周囲からの雑音を封印して、昨年のカナダGP以来のポールポジションを獲得する。今季初のポールポジションは、昨年の最終戦からレッドブルが続けていた連続ポールポジション記録を阻止する見事なアタックだった。
ハミルトンが喜びを爆発させるだろうと予想する、メディアたち。特にハミルトンの地元イギリス人記者たちは、ドイツ人の若き王者を倒して1年ぶりに手にしたポールポジションに喜びを爆発させていただけに、ハミルトンの冷静な対応に戸惑った。