F1ピットストップBACK NUMBER
ハミルトンが韓国GPで6戦ぶり表彰台。
なのに……笑顔が無かった理由とは?
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2011/10/21 10:30
「こういうハードなレース展開のプレッシャーに耐えることはF1王者の証明だと思っている。今日は、そのことを示すことができた」とレース後にコメントしたハミルトン
「でも、大切なのは明日のレース」 元王者の矜持は健在。
じつは冒頭の質問の前にも、すでに同じような意味の質問は2度、ハミルトンに向けられていた。そして、それらの質問に対して、ハミルトンは小声でこう答えていた。
「もちろん、ここまでのパフォーマンスについては満足している。でも、大切なのは明日のレース」だと。
そして、冒頭の質問が飛ぶ。
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ハミルトンの顔には依然として笑みはなかったが、怪訝そうな表情を見せることもなく、平然と返答した。
「別にアンハッピーだというわけじゃない。チームから受けているサポートのおかげで、僕はリラックスすることができているからね。いま僕がこの場にいられるのも、チームのおかげ。誇りに思っている。だからこそ、日曜日のレースが大切なんだ」
その言葉が偽りではなかったことは、日曜日のレースで証明される。
ハミルトンはポールポジションからスタートした直後に、ベッテルにオーバーテイクを許すも、その後は2番手を堅持。序盤にフロントウイングに破片が挟まるというトラブルに見舞われて、終始アンダーステアに苦しめられて、ウェバーに2度ポジションを明け渡したが、諦めずにその都度、逆転。優勝はベッテルに譲ったが、第10戦ドイツGP以来、約3カ月ぶりのポディウムフィニッシュだった。
しかし、ハミルトンは6戦ぶりに表彰台に上がってもなお、表彰式で笑顔は見せなかった。
「負けて喜ぶドライバーはいない」と2位の結果に憮然。
レース後の記者会見では再びハミルトンにこんな質問が飛んだ。
「勝てなかったとはいえ、素晴らしいレースで2位を得ました。でも、あなたはまだ沈んでいるように見えますが……」
ハミルトンは答えた。
「あれだけ激しいバトルをレッドブルと繰り広げたけど、誰とも接触しなかったし、ペナルティも受けなかった。その点は評価していいと思っているけど、勝てなかった。負けて喜ぶドライバーなんて、いないよ」