青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER
全米プロ失速は優勝争いの後遺症!?
石川遼らしい、大乱調の中の成長。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAP/AFLO
posted2011/08/18 10:30
ブリヂストン招待の最終日に続き、全米プロ選手権初日もアダム・スコットと同組でラウンド。予選落ちの石川とは対照的に、アダムは4アンダー、7位で大会を終えた
メンタル面の目に見えない疲労感が判断力を鈍らせた。
しかし、結果的にそれは裏目に出た。身体の疲れ以上に、メンタル面の目に見えない疲労感が抜けないまま初日を迎えることになったからだ。
「初日は早いスタートだったので朝にコースに来た時はまだ外は真っ暗だった。パッティングもアプローチの練習場も真っ暗。日本ではサスペンデッドの再開の時でもそこまで暗くないし、太陽がないとなんだか不思議な感じがしてモチベーションを上げるのが難しかった。自分としては初日でも落ち着いてるなと思っていたんだけど、燃えるべきものがしっかりと燃え切ってない落ち着きだったのかもしれない」
鈍さの残る精神状態はプレーにもすぐに顔を出した。初日の前半11番パー4、この日初めて池に落とした2打目だった。
石川のティーショットはフェアウエー。残りは116ヤードだが、かなりの打ち下ろしで距離感は難しい。ピンは池がすぐそばで待ち構える右から5ヤード、手前から7ヤードの厳しい位置。
石川より先に打ったアダム・スコットとマテオ・マナセロは、まず池を避けることを優先した。グリーンの左手前に乗せる安全策を取った2人に対し、石川はそれを潔しとせずにアプローチウエッジでピンをまっすぐに狙った。
「セオリーとしては2人の打った場所が狙い目だけど、あっちには打ちたくなかった。ピンの左2mを狙って打って、そこでちょっと緩んじゃいました」
十分なキャリーを出せなかったボールは、グリーンの手前に落ち、池に向かう傾斜を転がって静かに水面を揺らした。ここでのダブルボギーをきっかけに悪夢のラウンドは始まった。
石川から慎重さを奪った、予選落ちへの焦りと動揺。
ブリヂストン招待では「攻めまくって、ミスしたらリカバリーする」というゴルフが驚くほどうまくはまった。しかし、全米プロの初日は、頭では攻めようと思っていても、そのゴルフを実行に移す命令が身体に伝わらないような感じだったという。
前週の余韻に任せて突っ走るのではなく、リカバリーの効かない池が効果的に配された難コースに対する慎重さがもう少しあれば、プレーの判断は違ったものになったかもしれない。
「先週と今週ではコースの変わり方もハンパじゃなかった。グリーンの芝も転がり方も違う中で、あれだけタッチを合わせられるアダムはすごい」
コースの芝はベントからバミューダに変わり、グリーン周りのアプローチにも変化が出る。グリーンは前週よりもはるかに硬く締まり、ボールの止まり方や転がりをまったく違えていた。ブリヂストン招待では石川を助けてくれたアプローチやパッティング。その距離感のスイッチも切り替えることができていなかった。
2週続けて同組で回ったアダム・スコットの見事な対応力に感心させられつつ、スコアを落としていけば自然とカットラインが気になってくる。ここも出場人数が限られ、最初から予選落ちのないブリヂストン招待との大きな違いだ。焦りと動揺が「コースは練習場」との姿勢も揺らがせた。