セリエA コンフィデンシャルBACK NUMBER
デルピエロ不要論に物申す。
text by
酒巻陽子Yoko Sakamaki
photograph byAFLO
posted2007/10/15 00:00
まるで冬眠から目覚めた熊のように、ユベントスのストライカーたちが待ちわびたシーズンで躍動している。
10月14日現在、トレゼゲはリーグ戦7試合7ゴールと絶好調。新加入のイアキンタが4試合出場で4ゴールを決めれば、23歳の若手パッラディーノもリーグ4試合出場で1ゴール、イタリア杯でも1ゴールを挙げた。
ただ、快進撃を見せるFW陣の中で遅れをとっているのはエースのデルピエロだ。彼だけにいまだ「春」が到来していないため、最近では「デルピエロ不要論」まで飛び出している。
今季のデルピエロの成績は、リーグ戦443分出場(4試合出場)で1ゴール。数字上ではチームメイトに劣っているわけではないが、イタリアメディアによる採点が平均で「6.1」と断然低い(ちなみにイアキンタ、トレゼゲへの採点は「6.88」)。昨シーズンのリーグ戦20ゴールに引き続き、今季もゴール量産という目標に向かって高いモチベーションを持っているものの、アウトサイドにポジションをスイッチしたことで苦境に立たされた。ぎこちなさが残り「他人行儀のプレーが目立つ」というのがイタリアメディアの寸評だ。ユベントスのラニエリ監督は、デルピエロの不振を「年齢」の一言ですませている。
エースの不振はアズーリにも影響を及ぼした。正念場とされたユーロ2008予選の対グルジア戦(10月13日)で、デルピエロは代表メンバーから外れた。イタリア代表のドナドニ監督は、アズーリで27ゴールをあげた男に、ユニフォームに袖を通す機会さえ与えなかったのだ。
致命傷ともいわれた左膝の大けがから完全復帰したデルピエロ。今回の不振は、監督らの目に映るように「老い」が要因なのだろうか?
私は「老い」が原因ではないと思う。かつての中田英寿と同じだ。攻撃的なミッドフィルダーでありながらも中田英に求められていたものは守備だった。ラインを下げてチームメイトの尻拭いをするヒデを評価したものは存在せず、「消極的なプレーに甘んじている」とメディアの厳しい目にさらされたことを記憶している。デルピエロも中田英と同じく、ポジションにこだわらない万能型であるからこそ、指揮官から本来の役割以上の「注文」を受ける。しかし、期待通りの仕事ができないと「不振」のレッテルを貼られるのである。
デルピエロの選考もれについてドナドニ監督は、建前では世代交代を理由にあげた。「デルピエロをベンチへ送ることは招集しないことより辛い」と体のいいことを繰返しながらも、ユベントスのラニエリ監督同様、選手としてのフィジカルの限界、つまり「年齢」にも言及した。
トレゼゲ、そしてイタリア代表の新鋭FWディナターレなどの破壊力は人の目をひくが、そんな猛攻の裏には、中盤の献身的なプレーが根底にあるということを、もう少し語られてもいいような気がする。デルピエロが大ケガの影響を感じさせない鋭い動きができること、そしていまだ一流のテクニシャンであることを、私は彼の「地味」なプレーから感じ取っている。