セリエA コンフィデンシャルBACK NUMBER
広がる「打倒ユベントス」ムード。
text by
酒巻陽子Yoko Sakamaki
photograph byKazuya Gondo/AFLO
posted2005/01/25 00:00
セリエAは、1月16日で今季日程の半分を消化した。名将カペッロ率いるユベントスは、2位のミランに2ポイント差をつけて首位をキープし、辛うじて「冬季スクデット」(前半戦での首位)の座を守った。開幕当初は圧倒的な強さを見せていたのに、なぜ「辛うじて」なのかというと、審判のユベントスびいきが表面化した昨今、全チームが「打倒ユベントス」を掲げているために、容易には勝てないからだ。
格下チームでさえ、「ユベントス戦は燃える」とモチベーションが高く、この闘争心がユベントスの覇権奪回への道を困難にしている。「冬季スクデット」を決めた日も、カリャリのFWゾラのベテランパワーが、ユベントスを終始威圧した。FWゾラの磨きがかかったプレーは見事で、「ベテラン健在」を観る者に再認識させた。
体当たりで、ユベントス相手に勝負し続けた38歳のゾラ。イタリア一の守護神ブッフォンから見事にゴールを奪った「圧巻のヘディング」に、チェルシー(イングランド)で長年培ってきた力を垣間見た。試合翌日のイタリア紙は、ユベントスが誇るツインタワー、長身DFゼビナとチュランの高さを余裕で超えた「小さな巨人」の並外れたジャンプ力、そして絶妙なタイミングを絶賛した。
「ゾラもミランの味方につく」の見出しは、セリエAすべてのチームが、ユベントスの敵に回ったことを暗にほのめかしている。ユベントスの肩を持つのはもはや審判のみなのであろうか。
若手選手の闘争心と持久力を買うカペッロ監督に反して、宿敵ミランの指揮官アンチェロッティは、大ベテランのDFマルディーニとコスタクルタの堅実な守りに絶対的な信用を置く。確かに彼らの「永遠の若さ」は、いまだに若手FWイブラヒモビッチやFWサラジェータの速攻を十分に封じることができる。セリエAデビューから20周年を迎えた満37歳のマルディーニは、自身8度目のリーグ優勝に向け、万全なフィジカルを保っている。
レベルアップしない審判団による誤審問題に、各チームがしびれを切らしたのがきっかけで、セリエAの中に「打倒ユベントス」のムードが生まれた。近年のセリエAでは、ユベントスが相手だと各チームは最初から尻込みしていたが、今シーズンは、どのチームもベテラン選手を中心に、ユベントス戦だからこそハッスルする。
悪を滅ぼす(?)、正義の味方と化したセリエAの19チーム。激しいバトルは、後半戦も続くことだろう。