総合格闘技への誘いBACK NUMBER
船木vs.桜庭に期待する渋き輝き。
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2007/12/18 00:00
『Dynamite!!』と『やれんのか!』によるまさかの大連立によって久しぶりに活気を取り戻しつつある大晦日格闘技戦線。
『HERO'S』と『旧PRIDE』という二大勢力が大同団結することは、来年はもちろんのこと、もうブームは過ぎ去ったと言われて久しい格闘技界の未来にどんな影響を与えるのか未知数ではあるが、明るい材料であることはまちがいない。それを象徴するかのように、大晦日興行では組織の枠を飛び越えたこれまででは考えられなかったカードが続出しており、お祭らしく華やかで非常によろしいのである。
しかし、その中に異質なカードひとつ──桜庭和志VS.船木誠勝。
日本の総合格闘技が新しい局面を迎えつつある現状において、何とも微妙なふたり。山本KIDや五味隆典、青木真也といったニュージェネレーションの台頭、そしてヒョードルを中心とした外国人天国になっている昨今の状況から考えると、ノスタルジックというか前時代的な匂いの漂う対戦である。その要因となっているのは、桜庭よりも船木という存在にあるだろう。
ここ数年のブームで総合格闘技を見るようになったファンにとって船木はいまいちピンとこない存在だろうが、プロレスとの線引きがあいまいだった過去の総合格闘技界を知るものにとっては、記憶から切り離すことのできない存在だ。それこそ前田日明や高田延彦に並ぶ日本総合格闘技界のキーマンであるといってもいいだろう。
史上最年少15歳で新日本プロレスでのデビューを飾ると、'93年に『パンクラス』を設立しエースとして活躍。そして、総合格闘技ブームがいよいよ最高潮を迎えようとしていた'00年、『コロシアム2000』においてヒクソン・グレイシーに敗れると突然引退宣言し30歳の若さでリングを去っていった……。
あれから7年、船木は俳優業やコメンテーターなどの活動をしていたが、今年になり現役復帰を宣言し、桜庭との大晦日対戦が決まった。
引退前の船木のファイトスタイルは鋭い打撃が中心。しかし船木は現在、本番へ向け、菊田早苗や郷野聡寛、三崎和雄らが所属する寝技の名門GRABAKAで練習を積んでいる。寝技を選ぶには理由がある。
船木の引退した後の総合格闘技界は、技術体系が大きく変わった。打撃優勢と寝技優勢の時代を交互に何度か繰り返し、その間に打撃からのタックル、またパウンドの有効性が立証されると打撃・寝技に偏っていては勝てない時代が訪れた。現在の総合格闘技は寝て良し立って良しの高いスキルのあるコンプリートなファイターでなければ生き残れなくなってきている。