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船木vs.桜庭に期待する渋き輝き。 

text by

石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2007/12/18 00:00

船木vs.桜庭に期待する渋き輝き。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

 もちろん、かつての船木もそういったコンプリートファイターを目指していただろうが、当時は現在と比べ競技としての熟成、つまりノウハウの蓄積がちがうので、そうもいかなかった事情もある。

 そして大晦日、7年ぶりの試合の対戦相手が桜庭という変幻自在な業師が相手ということもあり、船木は現在寝技中心の練習メニューにとりくんでいるというわけだ。

 船木は復帰に関してインタビューで次のように語っている。

 「総合は面白い。奥が深いし、この7年間で進化したのでやりがいがあるんです」

 以前と同じ総合だったら復帰の意味はないといわんばかりである。そして船木は、この復帰を“求めていたモノ”だと言う。

 「もう1回戦えるのが嬉しいし、楽しみたい。この7年間、牢屋に閉じ込められていた感覚がある。“なぜ俺は30過ぎで引退しなければならなかったのだろう?”という概念がずっと頭の中にあったんです」

 古い概念でいえば、30歳というのはスポーツ選手においてある種の節目だといえる。格闘技に限らず、オリンピックスポーツや球技を30歳で辞める人間は珍しくはない。しかし現在は、メディカル面で以前より発展を遂げたため長く現役を続ける選手も増えてきている。

 「終わってしまうと過去になる。やり続けることが一番大事なんだって」

 人間、人生でもそうだが失って理解をしたり見えてくるモノが多いのは確かである。船木は、失って気がついたモノを再び手に入れるためにリングに上がる。その相手は桜庭。ヴァンダレイ・シウバに何度も倒され立ち向かい、限界を囁かれてもリングに立ち続ける、まさに“やり続けているファイター”の代表格である。

 同世代のふたり。船木と桜庭の対戦は、人生をテーマにした趣き深い対戦なのだ。大連立によってフレッシュなカードが注目されるだろうが、派手さはないものの野に優しく咲く花のような味わい深いこの対戦もぜひ楽しみにして欲しいものである。技術を越え、勝敗を越えた年輪と豊かなサイドストーリーがそこにはあるはずだから。

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