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F1もワールドカップ一色
text by
西山平夫Hirao Nishiyama
photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)
posted2006/06/26 00:00
世はワールドカップ一色。普段はさほどサッカー好きでも強烈な愛国者でもない向きも、4年に1回は眠れぬ夜が続くのが、ワールドカップの影響力の凄さである。
先のイギリス・グランプリの週末もワールドカップ開催週と重なっていたためスケジュールを変更。通常なら午後2時がルーティンの土曜日予選開始が1時間半前倒しの12時半。午後2時からはイングランドvsパラグアイ戦があるからなのだった。日曜日決勝スタートもお昼の12時。ゆえに朝9時30分の食事がランチということになった。お陰で仕事が早く終わってよかったけれど、暗くならないうちに原稿を打ち終わるのは、なんだか変な感じだった。
“ご当地”イギリスは週末にイングランド戦がある関係で観客がガタッと減るかと見えたが、金曜日などレコードとなるほどの大入り。イングランドも緒戦を辛勝し、イギリス人万々歳……と思いきやヘルメットのカラーリングをユニオンジャック調からイングランド旗に変えたほどの愛国者ジェンソン・バトンが、セッション中の車重測定に時間を取られて不発。予選1回目で敗退して、サッカー好きのF1ファンには嬉しさも半分となった。
ところでF1ドライバーの出身国を見ているうちに、ちょっとしたことに気がついた。ワールドカップ参加国のドライバーが多いのだ。
優勝候補のブラジルはバリチェロ、マッサ。スペインはアロンソ。ドイツはシューマッハー兄弟にハイドフェルド、ロズベルグ。イタリアはフィジケラ、トゥルーリ、リウッツィ。イングランドはバトン。オランダはアルバース。ポルトガルはモンテイロ。フランスはモンタニー。アメリカはスピード。オーストラリアはウエーバー。そして日本は佐藤琢磨。22人中17人というのはちょっとした壮観(!?)ではないか。サッカー隆盛国からはF1ドライバーが出る確率が高いという法則があるのかもしれない。
ここからはちょっとこじつけめくが、以上に挙げた国々がこれまたワールドカップの強豪国が多い。6月25日が決勝のカナダ・グランプリを前にブラジル、ドイツ、スペイン、イングランドなどは決勝トーナメント進出を決めているし、オランダ、ポルトガルなども強い。逆に勢いがないのがフランス、日本あたり。マシンの速さと正比例しているような気がしないでもない。カナダ・グランプリのパドックもF1そっちのけ、ワールドカップの話題が飛び交うだろう。
そういえば、イギリス・グランプリの翌日、シルバーストンから1時間弱ほどのところのリーフィールド村にあるスーパーアグリF1チームのファクトリーを訪ねたら、多くのスタッフが日本vsオーストラリアを観戦中。前半1−0でリードしているうちは日本人スタッフの勢いがよかったが、試合終了後はデザイナーのマーク・プレストンひとりがニヤニヤしていた。彼はオーストラリア出身なのである。心なしか、鈴木亜久里代表からは笑顔がなくなっていたようだった。
先週のル・マン24時間も、カナダ・グランプリもワールドカップの人気には敵わない。モータースポーツも、ワールドカップが終るまではしばらく息を潜めてるしかないか。