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シャルケ04のミスター・プロフェッサー。 

text by

安藤正純

安藤正純Masazumi Ando

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photograph byAFLO

posted2005/03/28 00:00

シャルケ04のミスター・プロフェッサー。<Number Web> photograph by AFLO

 激闘の末にバイエルンを1−0で下し、ようやく手にした首位の座だった。翌週は格下のマインツが相手。ここでガッチリ首位を固めようぜと算段してたら…。アレレ、負けちゃいました。こうして順位は再び逆転。シャルケ04の1週間はまさに天国と地獄の往復旅行だった。

 きっと監督は激怒しているだろうなと想像していたら、意外にもラングニック監督は落ち着いた様子だという。「怒鳴ったりしない人だ。なぜ負けたかをじっくり論理的に説明してくれる。子供を諭す親みたいだ」(アイウトン)

 ブンデスリーガには「試合に負けたら懲罰として翌日、1時間のランニングをさせる」「朝(夜?)の3時に選手を起床させ、特訓を始める」「命令は絶対であり、一言の文句も許さない」「逆らったら鉄拳制裁」といった暴君が君臨する。信じられないことに、「お気に入りの選手に泣きつかれると、給料と待遇をすぐに改善してやる」会長さえ存在する。

 こうした監督と違ってラングニックは、きわめて冷静かつ専門的である。何がといえば、戦術への理解力の深さだ。ドイツで誰も『ゾーンディフェンス』なる言葉を知らなかった時代、彼はテレビ番組で懇切丁寧にこのシステムを紹介した。番組を見た視聴者は「難しいと思っていた戦術が、彼の説明ですごくよく分かった」と舌を巻いた。そこで付いた渾名は『ミスター・プロフェッサー』。教授という訳だからスケベ…、いや、真面目で思いやりに溢れている。

 なにしろ、天下一のわがまま選手アイウトンが全幅の信頼を寄せているのだ。「オレが不調だと分かった監督は、シーズン中なのにオレをブラジルに帰してくれた。これで生気が戻った」。その後の復活はご承知の通り。

 シーズン序盤での就任だったラングニックは、選手にあれこれ要求しなかった。とにかく対話が第一、そこから信頼が生まれた。前任者のハインケスはただ選手に命令し、権威でもって屈服させる古いタイプの指導者だった。いまどき、そんなことで付いていく選手はいない。

 シャルケの目標はもちろんリーグ優勝だが、財政事情を考えたら「とりあえずチャンピオンズリーグ出場」で合格点である。シャルケは、私がドイツでもっとも好きな『アレーナ・アウフ・シャルケ』の莫大な建設費を償還するため、毎年19億円の支払いがある。それがCLに出場すれば最低でも20億円の臨時収入となる。

 熱狂的ファンと大風呂敷を広げるGMでつねに話題を振りまくシャルケだが、チーム躍進の影には必ずこうした冷静な男が存在するのだ。ちなみにラングニックはプロ選手の経験がない。選手経験がないからこそ、論理と話術を駆使して説得するのだろう。やはり、ミスター・プロフェッサーだ。

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