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中嶋一貴、2年目の課題。
text by
西山平夫Hirao Nishiyama
photograph byMamoru Atsuta
posted2009/04/11 07:00
開幕戦オーストラリアは4位走行中にクラッシュし、リタイア。1週間後のマレーシアはスタートの出遅れを取り戻せず、12位。中嶋一貴のレギュラードライバー2年目のF1シーズンは2連戦でポイントゼロの苦い滑り出しとなった。
中嶋の今年の課題は、ベンチマークともいえるチームメイトのニコ・ロズベルグに匹敵する速さを見せ、昨年以上の戦績を収めることに他ならない。そのためには、予選でトップ10入りすることが先決。F1のタイミングモニターはサーキット全域を3分割し、セクター1、2、3と区間タイムを表示するが、白い数字表示が最高タイム記録時にはピンクに、自己ベストを更新するとグリーンに変わる。タイムアタックに入った時、全セクターをグリーンの数字で繋ぐこと、それが中嶋のひとまずの目標である。
いい走りを見せながらも、“攻めた”ミスで沈んでしまう
オーストラリアでの中嶋は、16位以下が敗退する予選最初のQ1を12位で通過し、続くQ2でトップ10入りを目指した。ところが、2回目アタックのセクター1、2でグリーンの数字を点灯させながらも、セクター3のターン13で「アクセルを踏んで出て行く時にクルマのバランスを崩した」ミスで13位。目標であるQ3入りは果たせなかった。しかし、“攻めて”のミスゆえ、これは中嶋を責められない。
だが、決勝は一転、すばらしい展開となった。1コーナーで起きた多重事故をうまくかいくぐり、重いタンク(多量の燃料搭載)を利して20周付近では4位まで浮上。直前を行くバリチェロがほどなくピットインすることも判っていたから、表彰台は目前だった。
しかし、コーナリング中に縁石にのり上げた瞬間マシンがバランスを崩し、スピン! ノーズからウォールにクラッシュしてしまう。めったにないチャンスを自ら潰してしまった。
「もったいなかったですね。おそらく(表彰台の)大チャンスでした」と、レース後の中嶋は苦笑するばかりだったが、口惜しさは人一倍だったに違いない。
とにかく課題は予選上位進出。今季はマシンも優位に立つ
1週間後のマレーシアはQ1を13位でクリア。Q2も見事に全セクターでグリーンの数字が並んだ。ところが、10位からわずか100分の9秒差の12位。またもトップ10進出はならなかった。
「自分の操作ミスはなかったんですが、路面が思った以上に急激に良くなっていきましたね」と、予選後の中嶋。サーキットの路面はマシンが走行するたびにタイヤのゴムが路面に擦り付けられ、グリップが良くなる。だから、中嶋のマシンのグリップの限界が思った以上に高まっていたわけで、結果的にはもっと“攻めて”もよかったのだ。チームメイトのロズベルグはオーストラリアで予選5位、マレーシアで同6位(降格者が出てグリッドは4位)だったが、これこそ経験の差なのだろう。
マレーシアの中嶋は11位からスタートしたものの、「スタートのグリップが良くなく、ホイールスピンが大きく、蹴り出しもきかずに」オープニングラップで14位に後退。その後、雨の混乱があったものの、12位にしか上がれなかった。
「予選で前に行かないといけない。埋もれてしまうとキビシイですからね」
幸い今年のウィリアムズ・トヨタには“一発の速さ”があることがこの2戦で確認された。第3戦中国から中嶋一貴の巻き返しが始まる。