スポーツの正しい見方BACK NUMBER
野球人気のこれから……。
text by
海老沢泰久Yasuhisa Ebisawa
photograph byToshiya Kondo
posted2006/07/20 00:00
ワールドカップで日本代表が世界から冷や水を浴びせられて帰ってきたのはつい先日のことだが、テレビがブラジル戦までの喧騒が嘘のように静かになってしまったので、なんだかずいぶん遠い昔のできごとだったような気がしている。
おそらくこの結果で、Jリーグの試合もいささか醒めた目で見られることになるだろう。当初はテレビの大宣伝に騙された人たちも、いまはあの程度だったのかと思っているに違いないからだ。とくに、われわれは、準々決勝以後の試合で、骨のきしむ音が聞こえるような肉体と肉体のぶつかり合いの試合を見せられた。それにくらべると、わが代表たちは、監督の采配だの戦術の問題以前に、あまりにもおとなしく、そして弱々しかったのである。それでも、追いつめられた鼠が猫に立ち向かっていくように、死にもの狂いで戦っていれば負けても感動したかもしれないが、そういうこともなかった。
これからJリーグもたいへんだと思う。一度醒めてしまったファンの目を再び熱くするのは容易なことではないと思うからだ。が、ともかくワールドカップは終わった。
さて、そこで野球のほうはどうなっているかと久しぶりに目を転じてみると、こちらのほうもひどいことになっていた。ジャイアンツ戦の平均視聴率の低下が今年も止まらず、4月が12.7%、5月が11.1%、6月が9.2%で、3カ月連続で過去最低の数字を更新しているのである。7月6日のドラゴンズ戦はじつに4.8%まで落ち込んだそうだから、このまま行くと7月も過去最低を更新することはまちがいあるまい。
それを受けて、フジテレビは7月7日に、8月以降のジャイアンツ戦を地上波では放映しないことを明らかにした。最近は日本テレビすらジャイアンツ戦の放送に情熱を失っているようで、夜の9時以降の放送延長をしないことが多い。ジャイアンツと何の関係もなく、ただ視聴率が取れるから放送していただけのフジテレビが放送中止するのを決めたのは当然といえば当然といえる。
一昨年のストライキ騒動のとき、プロ野球の新機軸として、パ・リーグが長く望んでいたセ・パ交流戦が実現した。ぼくはそれを支持し、いまも交流戦を面白いとおもって見ているが、パ・リーグの狙いは面白い試合を見せるというより、1試合1億円といわれたジャイアンツ戦の放映権を得て赤字を埋めることだった。つまりはじつに志の低い動機だったので、ジャイアンツ戦の放映権がいつまで1億円で売れると思っているのか、売れなくなったときにどうするのかと、ジャイアンツ頼りの経営に疑問を呈したことがある。ついにそのときがきたのである。まさかこんなに早くそのときがくるとは思わなかったが、野球ファンはサッカーファンより早く醒めた目で野球を見ていたということなのだろう。ジャイアンツばかりでなく、球界関係者のすべてが野球のこれからを本気で考えなければならないときがとうとうきたのである。