プロ野球偏愛月報BACK NUMBER
地区予選の公平性について。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2006/07/12 00:00
夏の甲子園大会出場を争う各都道府県大会は既にスタートしている沖縄、北海道(南北地区とも)、鹿児島の4地区以外は、8日にスタートする16地区が臨戦態勢に入っている状況。多くの組合せが発表されていて、それを見ると「えっ、何で!」という対戦もある。たとえば、高知大会1回戦の高知高対明徳義塾高戦や、徳島大会1回戦の小松島高対鳴門高戦がそう。何で、というより「舌なめずりしたくなる」と表現したほうがいい好カードだ。この2県は参加校の少なさでも知られている。
参加校が少ないのは、*鳥取県25校、*福井県29校、高知県32校、徳島県34校、香川県39校、山梨県39校、*島根県40校、和歌山県40校、佐賀県41校で、こういう地域とくらべて神奈川、大阪など200校に迫る都府県は不利ではないか、という議論が一時期は盛んに新聞や雑誌を賑わしていた。曰く、「参加校数がこれほど違いながら参加枠が変わらないというのは不公平ではないか」──(*印は昨年の参加校数)。
しかし、そういう議論が現実を知らない机上のものだということは、高知大会、徳島大会1回戦の好カードを見れば明らか。かたや東京(東西とも)神奈川など大都市の組合せを見ると、シードされた強豪校にとって4回戦までは非常に楽な相手が用意されている。机上の論理だと7、8回勝って甲子園大会に出場する大都会の学校はクタクタになっていなければならないが、現実はしんどさにそれほど変わりはない。それでもおかしいと言うのなら、シード校は2回戦からではなく、4回戦から出場できるようにと主張したらいい。
シードなんてとんでもない、という地区もある。何と大阪大会にはシード校が存在していないのだ。だから時として「アッ!」と驚く戦いが序盤戦にある。今年なら6校の中に大商大高、阪南大高、上宮高、大体大浪商高が固まっているブロック。この4校は3回戦までに戦わなければならない。
ちなみに、大商大高は春のベスト8校、阪南大高は昨年秋の4回戦進出校で、上宮高、大体大浪商高はそれぞれPL学園、関大一高に敗れているが、春は3回戦に進出している。この4校より明らかに力不足と思われる5、6校がかたまりとなっているブロックは15個以上あるのに、不公平な話である。
このやり方はおかしいと思う。サッカーのワールドカップのように、強いチーム同士の戦いは後半に用意されているほうが面白い。考えてみれば数年前まで、大阪府は華美なユニフォームは高校生らしくないといい、東海大仰星高が着用するストライプのユニフォームを許さなかったほどだ。またブラスバンドの応援も同じ理由で、これは現在も禁止されている。
大阪府大会の観客動員は神奈川や千葉などにくらべだいぶ少ないように見えるが、観客にしてみれば、球場も不便で老朽化しているところが多いし、応援スタイルも地味だし、あえて行こうとは思わないという気にさせられるのだろう。
参加校の少なさを問題にする識者たちは、大阪府のやり方こそもっと議論の対象にするべきだと思うがどうだろう。