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ポルトガル代表が身につけていた
大一番での「強者の振る舞い」。 

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杉山茂樹

杉山茂樹Shigeki Sugiyama

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posted2009/12/02 10:30

ポルトガル代表が身につけていた大一番での「強者の振る舞い」。<Number Web> photograph by Getty Images

プレーオフを連勝したポルトガルがW杯本大会出場を獲得。ボスニア・ヘルツェゴビナの初出場の夢は断たれた

ロシアにはポルトガルと違って何が足りなかったのか?

 対照的だったのはロシアだ。このチームは前述の通り、ユーロ2008で最も躍進したチームだった。今回の最終予選でもドイツに競り負け2位に甘んじたが、2年前の勢いは衰えていなかった。プレーオフの第1戦でもスロベニア相手に、一枚も二枚も上手なレベルの高いサッカーを披露し、終盤まで2-0でリードした。終了間際、相手にアウェーゴールを許し2-1で第1戦を折り返しても、ポルトガルより突破の可能性は高そうに見えた。

 だが彼らは、第2戦のアウェー戦でパニックに陥った。退場者を2人出す拙い戦いをした末0-1で敗れ、アウェーゴールの差で本大会出場を逃した。ポルトガルと180度異なるサッカーをしてしまったわけだ。

 ロシアが結果を残したのは、ユーロ2008ただ一度。それもチャレンジャーの立場で残したものだ。上り調子ではあったが、強者の振る舞いまでは身につけていなかった。追うチームから追われるチームになったときに不安を残すタイプ、格上より格下との対戦に不安を残すタイプのチームだと言うべきか。

バルサのCL連覇には、スペイン代表のW杯活躍もかかる。

 次元は異なるが、バルセロナにも似たような癖があった。'05-'06シーズンのチャンピオンズリーグ決勝でアーセナルを倒すまで、優勝はわずか1回。決勝戦にも4度しか駒を進めたことがなかった。まさかの敗退がどこよりも多い。こう言ってはなんだが、おっちょこちょいなビッグクラブだった。

 ところが、現在のバルサはそう見えない。本当の強さを身につけている。昨季のチャンピオンズリーグ優勝で、悪い意味でのラブリーさは雲散霧消した感がある。チャンピオンズリーグで2連覇を遂げたチームは、'88-'89、'89-'90シーズンのミラン以来出現していないが、今のバルサには、20シーズンぶりの快挙をやってのけそうなムードがある。

 かたやスペインの代表チームはどうなのか。こちらも来る南アW杯では、各ブックメーカーから本命に推されている。僕も今度こそ行けるんじゃないかと期待するクチだが、スペインが実績を残したのは前回のユーロだけ。ロシア同様、回数的には足りていない。追われて強いタイプには見えない。非バルサ的だ。

 ただし、イニエスタやシャビをはじめ、スペイン代表は、バルサの選手を多く抱える。彼らには“学習”のチャンスが与えられている。今季、バルサが2連覇を達成するか否か。それは、シーズン終了直後に行なわれる南アW杯でのスペイン代表の活躍とも深い関係がある。両者の関係には目を凝らしたい。

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