MLB Column from WestBACK NUMBER
MVPにこの投手を推薦したい
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGettyimages/AFLO
posted2006/09/27 00:00
早くもメッツが18年ぶりの地区優勝を決めるなど、プレーオフ争いがいよいよ終盤に入ってきた。私が主に取材を続けているドジャースが所属するナ・リーグ西地区は、なぜか毎年のように激戦が繰り返されている。今年もドジャースとパドレスの間で僅差の鍔迫り合いが展開されており、雌雄を決するのに最終戦まで待たねばならない可能性は十分ありそうだ。個人的には斎藤投手とともにドジャースに頑張ってほしいと願っている(とはいえ最近は苦戦続きで、取材している我々も重苦しい雰囲気に包まれているのだが……)。
さてプレーオフ同様、そろそろ注目される1つに個人タイトル争いがある。そんな中、ニューヨーク・タイムズ時代にメッツやヤンキースの番記者として活躍した当時に知り合いになり、現在はESPNの野球アナリストを務めるバスター・オルニー氏が、ア・リーグのMVP争いについて面白い意見を披瀝しているので、皆さんにも紹介したい。
メジャー球界にある暗黙の了解というべきか、投手のみを対象にしたサイヤング賞がある分、MVPは野手から選出されるべきだという流れがある。野手自身も大半が「試合数の少ない投手よりも、ほぼ毎日出場する野手の方がシーズンを通した活躍をしているのだから、よりMVPに相応しい」と考えているのも事実だ。しかしオルニー氏は、今シーズンのア・リーグに関してはツインズのホワン・サンタナ投手が選ばれるべきだと主張しているのだ。
もちろん過去に投手がMVPを受賞した例は何度かある。最近では1986年のロジャー・クレメンス投手や、1992年のデニス・エカスリー投手が選出されている。もちろん選考理由は「野手以上にチームに与えた影響力が絶大」だと考えられたからだ。オルニー氏もこの点から、サンタナ投手を評価しているのだ。
今季のサンタナ投手の成績(9月20日現在)は、32試合に登板し18勝5敗で、防御率2.77とずば抜けているのだが、最も重要なのは、彼が登板した試合のチームの勝敗は26勝6敗と20試合も勝ち越しているということだ。さらに突き詰めると、サンタナ投手の登板試合を除いた、今季のツインズの成績は 64勝55敗。勝率は5割3分8厘となり、現在ワイルドカードを争っているホワイトソックスの勝率(5割5分9厘)をはるかに下回ってしまう。つまりツインズが現在プレーオフ争いできているのは、サンタナ投手の存在があるからこそだというのは自明の理だろう。
さらにオルニー氏は、以下のようにサンタナ投手の活躍を解説している。
「ア・リーグ中地区で首位争いをしている2チームに対し、今季のサンタナ投手の成績は、対ホワイトソックスが3勝1敗で、タイガースが4勝1敗と圧倒していること。さらに優勝争いが激化した後半戦だけに限ると、彼の個人成績は9勝0敗で、チームも11勝1敗を残している。他にもホワイトソックスのジャメイン・ダイ選手、ヤンキースのデレック・ジーター選手、インディアンズのトレバー・ハフナー選手、レッドソックスのデビッド・オルティス選手、ツインズのジャスティン・モルノー選手らも目覚ましい活躍をしているが、サンタナ投手以上のインパクトを与えてはいないだろう」
オルニー氏の説明通り、今季のツインズの中でサンタナ投手が果たす役割が“野手以上”だというのは、非常に説得力がある。だが同氏は最後に「あくまでツインズがプレーオフに進出できた時に限った話」と但し書きしているように、上述したMVP受賞の2投手はいずれもチームをプレーオフに導いている。やはりサンタナ投手にとってもプレーオフ進出は絶対条件になるだろう(現時点での成績を見る限り、条件クリアはほぼ確実だとみて間違いなさそうだ)。
皆さんの意見は如何なものだろうか?
さらにア・リーグMVP同様、両リーグの新人賞争いもかなり面白くなってきた。ナ・リーグは相変わらず斎藤投手をはじめとする多くのルーキーが主力として活躍しているし、ア・リーグでは有力候補だったツインズのリリアーノ投手とレッドソックスのパペルボン投手が2人とも故障で戦線離脱し、さらに城島選手がルーキーの打撃部門でほぼ三冠王(打率だけが2位で本塁打、打点が1位)の成績を残すなど急浮上してきた。プレーオフ争い同様、ぜひとも注目してほしいところだ。