Column from GermanyBACK NUMBER
来季のバイエルンはどうなる?
text by
安藤正純Masazumi Ando
photograph byGetty Images/AFLO
posted2007/04/27 00:00
ついにトドメを刺された。リーグ4位のバイエルンが3位のシュツットガルトに0−2と完敗、これで今季の無冠が決まったばかりか、来季チャンピオンズリーグの出場権も失った。数字上は「バイエルンが残り試合に全勝し、上位3チームが全敗」すればリーグ優勝もCL出場権確保も可能だが、4位で終ってUEFAカップに回ると考える方が現実的だ。
チャンピオンズリーグ出場権を失えば、来季は約40億円の減収となる。約250億円のキャッシュフローがあるバイエルンにとって、すぐさま台所事情に直結するわけではないものの、経営陣にとっては許し難い屈辱である。
どうしてここまで墜ちてしまったのか。度重なる敗戦もシーズン途中の監督更迭劇も、バイエルンでは長らく経験したことがないものだった。早速、犯人探しが始まり、まずヘーネスGMが槍玉に上がった。「管理能力の低下」、「55歳は年寄りだ」、「新入団選手の目利きが悪い」など、次々と批判された。マカーイの不振、ダイスラーの引退を指摘する声も上がるが、どうにも説得力に欠ける。
私はやはり、バラックの放出がいちばん響いたと思う。彼のポジションを補える選手は、そうはいない。ACミランのカカだったら出来るだろうが、ミランは絶対に手放さないし、移籍金で渋チン政策を堅持するバイエルンが30億円以上の金額を出すわけがない。これでは交渉も始められない。そうなると自前で代役を探すしかなくなる。そこでアリ・カリミ、サンタクルス、ドス・サントスを試してみたものの結果は散々だった。
最新の統計によると、4年間在籍したバイエルンでよりも、わずか9ヶ月のチェルシーでのほうが、バラックは局面での競り合いで勝っていることが証明された。そのため守備でも攻撃でも1対1に強いバラックのおかげで「チームが負けない」ようになっている。
チェルシー移籍の理由をバラックは「バイエルンではCLで優勝できる感触を持てなかった」からだと告白しているが、もしもあのまま残留していたら“国内は敵なし、でもCLはベスト8止まり”の閉塞空間に留まって不満を募らせるだけだったに違いない。それがチェルシーでは初年度から4冠獲得が視界に入り、年俸も4冠を達成したら24億円になるという。万事ウハウハである。
ゲームを作れて得点もできる理想的なMF。国内でこの条件に当てはまる人材は現在、ハンブルクのファン・デル・ファールトとブレーメンのジエゴの2人だけだ。当然バイエルンが狙う選手はこの二人のどちらか。水面下で元バイエルンのレルビー(ファン・デル・ファールトの代理人)が交渉を続けており、実現する可能性は五分五分。すでにシャルケから右MFアルティントップ、アーヘンからFWシュラウドラフ、アルゼンチンから21歳のMFソーサの獲得が決定。降格するボルシアMGの右DFヤンセンもバイエルンに加わるかもしれない。
誰が出て、誰が来てもバイエルンはこれ以上、弱くなることはない。来季は期待していい。だがビッグクラブである以上、さらなる新陳代謝は必要であろう。決してヘーネスGMとベテラン監督(58歳)を標的にするわけではないが、上位チームの近年の躍進ぶりを見ると、どうしてもそういう気持ちに傾いてしまうのだ。
シャルケは“老害”だったアッサウアーGMを追放、44歳のミュラーGMと39歳のスロムカ監督に替えてから見違えるようにクラブ内の風通しがよくなった。ブレーメンも46歳のシャーフ監督と50歳のアロフスGMが家族のような温かみのあるクラブにした。3位のシュツットガルトは37歳のヘルトGMと46歳のフェー監督が、若い選手と兄弟のような絆の強さを誇る。
ベテランと絶頂期の境界線を引くのは難しい。それをいちばん良く分かっていたのが、絶頂期のバラックであり、GMの大ベテランであるヘーネスであったといえば、この先の展開をもっと面白く読めてくるのではなかろうか。