詳説日本野球研究BACK NUMBER
迷いの中で最下位に苦しむ東北楽天。
勝つために取るべき打開策と荒療治。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/07/02 08:00
6月25日には2打数2安打、2盗塁を記録した楽天・内村賢介。小兵ながらも俊足を生かしたしぶとい打撃でレギュラー定着を狙う
聖澤1番、鉄平3番、松井稼4番と打順を変えるべき。
しかし、聖澤の打順は2番だ。トップを打つ鉄平が出塁率.294(打率.226)と低迷しているので目立たないが、復活した場合、聖澤の1つ先の塁には鉄平がいることが多くなるはずだ。聖澤の脚力を生かそうとすれば1番に固定することが重要で、鉄平は実績から考えて3番に抜擢し、4番に松井を置く。
つまり1~4番まで走れる選手を並べるのだ。パ・リーグでは日本ハム、ソフトバンク、セ・リーグでは巨人が実践してきた、機動力に特化したチーム強化策である。楽天には幸いにして、足の速い選手が多い。
12球団随一の強肩捕手・銀仁朗でも刺せない内村の俊足。
2番を空白のまま放って置いた。ここに入れたいのが内村賢介である。どうして内村かと言うと、足が滅法速い。6月25日の西武戦、6回にヒットで出塁した高須の代走で出場すると、早速二盗を試みている。このとき西武の捕手、銀仁朗は二塁送球で12球団ナンバーワンと言っても過言でない1.80秒を記録する。
ADVERTISEMENT
アメリカのスカウトは日本の選手を評価するとき、捕手ならば二塁送球2秒未満、つまり1.99秒までの選手をピックアップする。日本の選手は最近、スローイングに対する意識が高くなり、イニング間の投球練習の最後に行われる二塁送球では2秒未満が多くなったが、1.8秒台はほとんどお目にかかれない。それが実戦で1.80秒を記録したのだ。しかも、内村はこの強肩をかいくぐって二盗に成功している。
聖澤、内村1、2番コンビこそ新生楽天の象徴になり得る。
8回には無死一、二塁の場面で最初の打席が回ってきて中前タイムリーを放ち、このときの一塁到達が4.26秒。
この記録にも言及すると、アメリカのスカウトは日本人選手の脚力を「打者走者としての一塁到達タイム4.3秒未満」を目安にして評価する。こういう速いタイムはもっぱらショートゴロとか三塁ゴロで記録されるが、内村は中前打で4.26秒を記録した。驚きである。
2死一塁は盗塁にはもってこいのシチュエーションで、西武バッテリーは徹底的に警戒するが、これをかいくぐって内村は2個目の二盗を成功させる。ちなみに、このとき銀仁朗が記録した二塁送球タイムは1.91秒。もはや言う言葉がない。そして、それほどの肩をもってしても内村の二盗は防げないのである。彼をベンチに置いて、代走要員、守備要員で起用するのはあまりに惜しい。聖澤と内村の1、2番コンビこそ新生楽天の象徴になり得ると確信する。