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最後の仕事に励むペニーの輝き。 

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小尾慶一

小尾慶一Keiichi Obi

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photograph byIssac Baldizon/NBAE via Getty Images/AFLO

posted2007/12/03 00:00

最後の仕事に励むペニーの輝き。<Number Web> photograph by Issac Baldizon/NBAE via Getty Images/AFLO

 両ひざの故障、繰り返される手術。故障欠場が増え、思うようなプレーができない。移籍も続く。マジックからサンズへ、サンズからニックスへ、ニックスからまたマジックへ。きらめきは、いつの間にか失われていた。2005−06年シーズンは、わずか4試合に出場。平均得点は、2.5だった。古巣のマジックで、ペニーは解雇を言い渡された。

 故障のせいだけではない。ペニーをよく知るスポーツキャスター、ホィット・ワトソンは、凋落の理由のひとつに「性格」を挙げた。

 自身のブログに、ワトソンは書いている。「彼は、おそろしく気難しかった。過剰なまでに批判を気にして…(中略)…私の知る限り、確かなのは、彼が全てを心の内に抱え込んでしまうタイプの人間だったことだ」

 ペニーのプレーは、美しかった。だが、いまにして思えば、その源には、ガラス細工のような脆さや弱さがあった。繊細で壊れやすいからこそ、よりいっそう、彼のプレーは輝いて見えたのかもしれない。

 ペニーは貧しい環境で育った。父親は不在、母親も仕事で家を空けることが多かった。ヒーローは、育ての親である祖母ルイーズ。彼女は、アメフトをプレーしていた少年ペニーに、別の競技をするように言ったという。かわいい孫に、ケガをしてほしくなかったのだ。

 彼女の願いもむなしく、ペニーは激しく傷ついた。心も、体も、ずたずたに。だが、ガラスの破片も、光を反射することはできる。今、ヒートの主役は、若きスターガードのドゥエイン・ウェイドだ。黒子となり、ウェイドを誰よりも輝かせること。それが、ペニーの最後の仕事になるだろう。

失意と混乱の中の希望。

 主力の故障もあり、ヒートは絶不調。だが、17日のネッツ戦では、ペニーの活躍が貴重な2勝目につながった。この日のペニーは、6本のショットをすべて沈め、合計16点。長いキャリアの中で、ペニーが試合中にシュートを1本もミスしなかったのは、これが初めて。試合後、彼は、マイアミ・ヘラルドの記者にこう語ったという。「NBAの歴史上、僕らほど自信に満ちた2勝8敗のチームはないだろうね」。11月29日の時点で4勝10敗。だが、ヒートもペニーも、調子は上向いている。

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