ジーコ・ジャパン ドイツへの道BACK NUMBER

空回りした国内組、その経験を生かせ 

text by

木ノ原久美

木ノ原久美Kumi Kinohara

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photograph byTamon Matsuzono

posted2004/11/19 00:00

空回りした国内組、その経験を生かせ<Number Web> photograph by Tamon Matsuzono

 ワールドカップ(W杯)1次予選最終戦が11月17日に埼玉スタジアムで行われ、日本はFW玉田のゴールでシンガポールを1−0で下し、6戦全勝で1次予選を終えた。

 すでに先月のオマーン戦で最終予選進出を決めていた日本は、欧州組も呼ばず、アジアカップ優勝やW杯予選で主力としてプレーしてきたDF中澤やMF福西、FW鈴木らをベンチに置いてプレー。この試合にジーコ監督は、三浦カズや中山ら日本代表の先輩功労者を招集したいとしていたが、これまで控えに回っていた選手らが「自分たちを使ってくれ」とアピール。控え組にとっては、その結果得た出場機会だった。

 だが、試合は見どころに欠ける、観客にとってはゴールのみならずチャンスメークと言う点でも、もの足りなさを感じる試合になった。

 序盤こそMF小笠原を中心に相手ゴールを脅かすプレーが続き、前半12分にはこの日先発FWとして出場した本山が左サイドから出したスルーパスを玉田が決めて1−0としたが、その後2度ほどあった決定的なチャンスを逃すと、攻撃は次第に手詰まりになってしまった。焦りを覚えたのか、DF松田までが頻繁に攻め上がり、チーム全体的が攻めがかりになると、中盤から効果的なフィードをする者が消えてしまった。サイドを使うという工夫も見られない。

 後半、ジーコ監督はFW大久保、FW鈴木、MF三都主を投入して突破口を求めるが、追加点を手にするには至らなかった。

 この組み合わせで試合をするのは初めてのことで、いわば別のチーム。実戦でのコンビネーションにスムースさがないのは、仕方がないことだろう。前線で高さのある選手がいないために、足元にボールをもらう形に終始することになったのも、攻撃が単調になってしまった要因のひとつだろう。

 試合前日にジーコ監督はこの9ヶ月のチームの成長について、「当初は国内組と海外組の力が大きく離れている感じがあった。チームが一緒に活動する時間も限られていたので、2月のオマーン戦や3月のシンガポール戦は個人の力で勝たなくてはいけなかった。それが、欧州遠征を経て解消され、キリンカップの頃から国内組がやれると思えるようになった」と振り返り、チームとしての熟成度が上がったことを満足そうに指摘していた。

 ところが、17日のシンガポール戦で見せた控え組のパフォーマンスは、2月のオマーン戦のような空回り感を漂わせ、このメンバーの成長とチーム全体としての底上げが必要なことを物語るものだった。

 試合後、来年2月から始まる最終予選へ向けて、今後のチーム作りについて聞かれた監督は、「個人の力を上げていくことは必要だが、チームとしての連携を上げて、組織での打開策を持つことも必要」と答えた。

 つまり、今回起用した選手やあるいはこれから台頭してくる選手らを、レギュラー組にどうブレンドしてチームとしての層を厚くしていくかが、ポイントのひとつになる。

 1次予選6戦全勝に終わったものの、消化不良の試合内容に、選手たちの表情もすっきりしないようだった。

 DF宮本は、試合前は何ゴールか獲っていい試合を見せたいという思いがチームにあったと話した。だが、現実はまったく違う展開に。

 「そこまでサッカー簡単じゃないと改めて感じた」と宮本は言った。そして、「今回集まって練習したこと、試合をこなしたことが一番の収穫だったと思う」と続けた。

 最終予選突破へ向けてやることは多い。それがわかったことがこの日の収穫だろう。

 最終予選の組み合わせは12月9日に発表される予定だ。イラン、ウズベキスタン、クウェート、北朝鮮、バーレーン、韓国、サウジアラビアが最終予選進出を決めている。

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