EURO2004 速報レポートBACK NUMBER
EURO2004開幕戦 ポルトガル vs ギリシャ ポルトガル、プレッシャーに負ける
text by
西部謙司Kenji Nishibe
photograph byGetty Images/AFLO
posted2004/06/13 00:00
ショウ・ザ・フラッグ。と、英語では言わなかっただろうが、ポルトガルのフェリペ監督は、国旗を掲げ気持ちを1つにして代表チームを応援してほしいと国民に要望していた。フェリペの呼びかけに応じ、ポルトガル中の家の窓やベランダには赤と緑の国旗が掲げられた。リスボンからポルトへ向かう列車の中でもずいぶん見かけたものだ。こんなに国旗を見た大会はかつてなかったと思う。
テレビも雑誌も新聞も、開幕前からユーロ一色。これまでビッグイベントの開催もない。フィーゴやルイ・コスタのゴールデン・エージが優勝したワールドユース大会ぐらいである。ヨーロッパの中では均質性が高いポルトガルは、一丸となってまとまるのはわりと容易な国民性である。ただし、それがプレッシャーとなる可能性もあった。
「ギリシャは守備が固いので、マニシェを起用してロングボールを使いたい」(フェリペ監督)ということで、フェリペ監督はメディアがレギュラーに想定していたペチートではなく、FCポルトの“ダイナモ”マニシェを中盤に起用した。ポルトガルは4−2−3−1、ギリシャは4−3−2−1のフォーメーション。案の定、ポルトガルの立ち上がりが固い。6分にパウロ・フェレイラのとんでもないミスが出た。パスカットしたギリシャは持ち込んだカラグニスがミドルシュートで先制ゴール。ポルトガル0−1ギリシャ。
ギリシャはワントップのヴリサスの高さ、キープ力からチャンスを作り、カリステアスとジャンナコプーロスが素早くサポートして2、3人のカウンターでフィニッシュへ持っていく。ポルトガルは20分ごろからようやくリズムをつかみ始めたが、それまでの時間は全くチグハグだった。ファンの大きな期待をパワーに変えるのが開催国の利なのだが、当然それはプレッシャーにもなる。ポルトガルはまともにプレッシャーを受けてしまった。02年ワールドカップの日本でも、これよりはるかに上手くやった。ポルトガルのメンタル面での弱さがもろに出てしまった前半だった。
後半、フェリペ監督はルイ・コスタに代えてデコ。シモン・サブロウサに代えてクリスチャーノ・ロナウドをピッチに送った。交代は妥当だったと思う。ルイ・コスタはパスを捌くだけで相手の脅威になっていなかった。デコはもっと核心をつくパスが出せる。さらに漫然とクロスを上げるだけでは、高さのないポルトガルでは点になりにくい。ゴールラインまで持ち込めるドリブラーとしてロナウドも必要な交代だった。しかし、後半の立ち上がりから代えたのはかなり早い決断であった。
後半5分、まだ流れに乗れていないロナウドがパスをカットされ、そのままカリステアスがドリブルで突進。追いかけたロナウドが背後からチャージしてPK。これをギリシャの中盤の要であるバシナスが冷静に右へ決める。ポルトガル0−2ギリシャ。
ポルトガルはロナウドの切れ込みからのクロスで再三チャンスになりかけるが、ことごとく中と合わない。20分にはヌーノ・ゴメスを投入して総攻撃をかけるが、ギリシャも体力を消耗しながら何とか守りきり、終了間際にCKからロナウドがヘッドで決めた1点に抑えた。
老練なレーハーゲル監督のギリシャは何かやりそうではあったが、開幕で地元チームを下す金星スタートとなった。確かにギリシャはよく組織され、カウンターには手慣れた効率のよさがあったが、とても優勝を狙うようなチームではない。敗れたポルトガルは、相変わらずの攻撃の効率の悪さなど欠点が目立った。しかし、これで国民の人気が高いルイ・コスタとシモンに見切りをつけられるだろう。メンタルの弱さで喫した1敗は高くついたが開き直る機会でもある。ただし、こちらも開幕戦を見る限りでは優勝を狙うには力不足に見えた。