野ボール横丁BACK NUMBER
楽天を“闘う”チームに成長させた、
田中将大の「人を惹きつける力」。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2010/01/04 10:30
WBC日本代表として連覇に貢献。今季は自己最速となる155キロを投げ、リーグ2位タイにしてチームトップとなる15勝を記録した
同年代の投手のなかで田中ひとりが突出している理由。
彼だけがなぜあんなに勝てるのか。よく考えることがある。過去にも、アマチュア時代、彼と比べて遜色のない強いボールを投げている選手は何人もいた。最近でも、'07年に大学・社会人ドラフト1位で東洋大からソフトバンクに入団した大場翔太などは、田中と同等の評価を得ていたように思う。だが2年でわずか4勝しかしていない。
ここ数年で言えば、結局、田中なのだ。田中ほどの実績とインパクトを残した選手は他にいない。その要因も数え上げれば切りがない。ただそれも、絶対要素は何かと問われれば、やはり彼の“闘争本能”ということになる。
プロ野球でも、ひとりの選手がチームを変えることというのは実際にあると思う。楽天と田中の成長過程を見ていると、それをつくづく感じる。そのような選手になるには、プレーヤーとしての能力だけでは足りない。見ている人に何かを感じさせる力が必要だ。
西武に入団する菊池雄星は第2の田中将大になれるか?
そんな田中に次ぐ選手ということで言えば、来シーズン、楽しみなのは西武に入団する花巻東の菊池雄星だ。マウンドに上がったとき、闘争本能の塊と化するあの感じは田中を彷彿とさせる。
ただ、西武は、楽天のように歴史の浅いチームではない。すでにありあまる伝統と実績がある。そこが楽天と田中のケースと違うといえば違うところだ。
いずれにせよ、そういう意味で、田中には単純に金額だけに置き換えられない価値があるのだ。