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球界はなぜ結束できないのか? 

text by

海老沢泰久

海老沢泰久Yasuhisa Ebisawa

PROFILE

posted2006/02/17 00:00

 プロ野球界というのは面白いところだ。12球団は、ともに歩み、ともに発展していかなけらばならない運命共同体のはずなのに、ひとつになって何かをしなければならないときになると必ずまとまらない。

 たとえば去年は、一昨年の球界再編騒動と選手会のストライキを経て、ドラフト改革を中心とする「プロ野球改革元年」と位置づけられた年だったはずだが、自由獲得枠が二つからひとつに減らされただけで、結局は何も変わらなかった。

 改革案は、従来のドラフトから自由獲得枠をなくし、下位球団から順に新人選手を指名していくウエーバー制に変えて、FA権取得年数を現在の9年からアメリカのメジャーリーグなみの6年程度に引き下げるというもので、これまで自由競争を訴えてきたジャイアンツなどが唱えた。このウエーバー制とFA短縮をセットにした案は、入団するときは選手に球団選択の自由を与えないかわりに、入団後により短期間で与えるというもので、論理的には妥当なものだった。また、それで新人選手に対する裏金授受疑惑もなくなるはずであった。ところが、こんどはこれまでウエーバー制を求めてきたバッファローズなどが、FAが現在のままの9年ならいいが、6年で移籍されるのは困るといい出してまとまらなかったのである。

 3月におこなわれるワールドベースボールクラシックの代表選出でも足並みがそろわなかった。

 こちらは、大会そのものに問題がありすぎたのである。

 野球の世界一を決める大会といいながら、アメリカのメジャーリーグとメジャーリーグ選手会の主催で、しかもシーズン直前に開催される。なぜアメリカの一団体の催しに参加しなければならないのかと思うのも、シーズン直前のコンディション調整を犠牲にしなければならないのかと思うのも当然といえる。

 しかも、東京ドームでおこなわれるアジア予選ラウンドは、メジャーリーグ傘下の運営会社とともに読売新聞が主催するのである。入場料は、日本戦のエキサイトシートが2万円。去年のジャイアンツ戦の料金は5500円だったそうだから約4倍だ。指定席も5900円の約3倍にあたる1万6000円、外野指定席でさえ5000円もするらしい。

 代表選手を出すことに当初から消極的だったのはドラゴンズとタイガースで、その両球団を「大会に協力しないのは姑息だ」と非難したのはジャイアンツの代表だった。しかし、読売新聞の主催だと知ればそれも納得できるのである。

 代表選手を出すことで、その選手や球団がどのくらいの分配金をもらうのか知らないが、誰もが納得する選手が代表として集まり、大会がいいものになればなるほど読売新聞が得をする。つまり、代表選手を出す球団は読売新聞の集客に協力することになるのである。そんなことをするのはバカバカしいと考えるヘソ曲がりがいてもおかしくない。

 いろいろ問題があるとはいえ、すくなくとも一球団のためではない大会をなぜジャイアンツの親会社が主催するのか知らないが、ともかくこちらもひとつにまとまれなかったのである。野球人気は危機に瀕し、いまこそ12球団のすべてが一体になってその打開策を見い出さなければならないときだというのに、まったくおかしな組織というほかない。

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