今週のベッカムBACK NUMBER
蜜月関係に入ったレアル・マドリーと日本市場。
text by
木村浩嗣Hirotsugu Kimura
photograph byMarca Media/AFLO
posted2004/01/22 00:00
レアル・マドリーが今年も来日する可能性が出てきた。そして、ジーコジャパンとの対戦を希望しているらしい。こういうニュースはいつも日本発で、スペインでは報道されない。日本からの知らせを聞くたびに、嫌な気分になる。
2002年5月7日、レアル・マドリーは日本代表と初めて対戦している。舞台は8万5000人収容のサンティアゴ・ベルナベウ。この歴史的な一戦に私は幸運にも立ち会っている。これは大変、貴重なことだ。なにせ、あの夜、あの場所でゲームを見つめていたのは、わずか1000人ほどに過ぎなかったからだ。
日本とスペインの関係は日本の片思いだ、と言われている。こちらは闘牛やフラメンコに熱を上げているのに、向こうは関心を示してくれない。サッカーもその例外でないことは、あのガラガラのスタンドが物語っていた。仮に、同じカードが横浜国際競技場で行われていたら、間違いなく満員札止めだろう。そのあまりに残酷なギャップ……。
もし、レアル・マドリーが日本代表との再戦を求めているとしたら、残念なことにそれは商業的関心でしか有り得ないだろう。
こういうことを書くのは屈辱だが、ロナウドやジダンが「日本サッカーに学ぼう」と思っているはずはなく、ケイロス監督が「プレシーズンマッチの相手として手頃だ」と考えている訳がない。まさか、蒸し暑いアジアでの調整が今季の好調の理由だ、と結論づけているのでもない。彼らのお目当てはジャパンマネー、そう考えると腹が立ってくる。
とはいえ、金儲けのマッチメークに「動機が不純!」と、不機嫌になっている場合ではないのかもしれない。
今や「ジダン、ロナウドを生で見たい」、「ベッカムのシャツがほしい」などという願いを、レアル・マドリーは必ずかなえてくれる――ベッカムを目玉商品としたアジアツアーからわずか半年、日本市場とレアル・マドリーはビジネスという強い絆で結ばれ、早くも蜜月関係に入ろうとしている気配すらある。
先週、レアル・マドリーのアパレル関係グッズを日本で販売する新会社の設立が発表された。スポーツ関連のグッズはすでに別の会社で輸入販売されており、すべてのレアル・マドリーブランド商品が、日本で買える日もそう遠くはあるまい。それどころか、スペインで買えない日本限定のオリジナルグッズだって出てきそうだ。
その勢いで、「レアル・マドリーでプレーしたい」という夢もかなえてほしいものだ。
同じく先週、来日した往年のゴールゲッター、現スポーツディレクター補佐のエミリオ・ブトラゲーニョは、東京でサッカー学校を設立する構想をぶち上げた。子供1000人を集め、将来はレアル・マドリーに選手を送り込む下部組織を作る、という壮大な計画だ。
昨年秋、開校したメキシコ校では、6歳から18歳までの青少年900人あまりが、レアル・マドリーのメソッドに従って、実技と論理を学んでいる。600人もの子供が入学待ちする大盛況だという。メキシコでその様子なら、東京は何千人があぶれるか想像もつかない。
ブトラゲーニョによると、レアル・マドリーが派遣する指導員は2人。たった2人で何ができるのか? 他の指導員は日本人になるのか? そんなやり方で本場の指導が徹底できるのか? など疑問点はいくつもある。ちなみに、メキシコ校では13人の指導員(そのうち何人がレアル・マドリーから派遣されたのかは不明)でまかなっているようだ。
いずれにせよ、学校のクオリティーは、来年以降という開校を待って評価するしかない。「動機が不純か」どうかの判断も、その時までのお楽しみとしておこう。