カンポをめぐる狂想曲BACK NUMBER
From:東京(JAPAN)「ユーロ2004観戦は暢気に、食中心でいかが」
text by
杉山茂樹Shigeki Sugiyama
photograph byShigeki Sugiyama
posted2004/06/15 00:00
しばらくぶりの東京。ペリエの広告を見ながら
各国の水について考えていたら、やっぱり
気持ちはユーロ2004のほうに……。
表参道の片側を占める同潤会アパートの跡地は、いま再開発のために工事中。歩道の脇は一面ボロ隠しの塀で覆われている。でも、塀を眺めながら、てくてくそこを歩くことは思いのほか楽しい。というのも、そこにはいつも、誰もが反応を示さずにはいられないキャッチーで楽しげな広告がでかでかとペイントされているからだ。
今回の広告主はペリエ。屋根からいまにも転げ落ちそうなペリエを、美女が懸命に拾おうとしているビジュアルで、キャッチコピーは、確か「どうしてもペリエが欲しい」だったと思う。低い家並みが連なるまさにパリといった背景は、僕をまるで現地に行ったような気分にさせてくれるのだけれど、だからこそ逆に、ペリエじゃないんだよなー、フランスのガス入水は、とも思ってしまうのだ。僕の好みはバドワ。ペリエより幾分微発泡で、こちらの方がずっと口に合う。バドワが日本では買いにくい点も、拘りを強くさせる点だ。
フランスがバドワならイタリアはサンペレグリーノ。いまやこちらは日本のスーパーでも買えるので、あっ俺も、私もなんて簡単に相槌を打たれそうだが、
スペインのビシィー・カタランとなるとそうはいかないハズ。紀ノ国屋に行っても手に入らないんじゃないか。ちょっとだけ塩っぽいその口当たりは、世界的に見てもかなり貴重だと僕は思う。
フランス、イタリア、スペイン。ガス入水の話は、時節柄、ユーロ2004を連想させる。じゃあポルトガルのガス入水は何、と聞かれそうだが、残念ながら、まだ僕はそこまでポルトガル通は気取れない。しかしガスなし水(普通の水)なら知っている。「ルソ」。先日、都内某ポルトガル料理屋で、不意に出てきたのがそれで、ボトルの絵柄を見た瞬間、僕は超感激した。そこで食べたたこ入りおじやも絶品の味だったが、ルソの感激はそれ以上だった。ポルトガルの情景が、フワーっと頭いっぱいに広がっていった。僕は、かなり酔っていたので、名前がルソだったかどうか、いまとなっては怪しいが、それはともかく、ルソもまた日本では簡単には手に入らない水だ。さらにいえば、今回ポルトガルまで出向く人も、ほんの一握りにすぎない。となれば、ユーロ2004観戦のベストパターンは、ご当地料理を自宅で食べながら、となる。
2002年W杯の時も、自宅パーティ派はかなりいたと聞くが、今回は日本が参加していない分、より暢気に、つまり食中心に盛り上がれるはず。しかし、ポルトガル対スペインとか、フランス、イタリア絡みは良いとしても、例えば、ドイツ対オランダ戦はパーティには不向きだ。というよりマズい。テーブルの上の料理が、ソーセージとクロケット(コロッケ)じゃあ、招かれた方はたまらない。イングランド対ドイツが実現した場合も困る。名前は良いが飯はマズ
い。試合もつまらない、たぶん。
次なる僕の訪問国は、ドイツとイングランド。嫌みたっぷりに言えば、飯の美味いポルトガルに行く前に、ちょっとマズい飯を食べてきます、という感じだ。ポルトガルに行けない人には、すいません。