オシムジャパン試合レビューBACK NUMBER

アジアカップ予選A組 VS.サウジアラビア 

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木ノ原句望

木ノ原句望Kumi Kinohara

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photograph byTamon Matsuzono

posted2006/09/11 00:00

アジアカップ予選A組 VS.サウジアラビア<Number Web> photograph by Tamon Matsuzono

 「ホームやアウェイというよりも、代表初招集の選手が多く、チームの国際試合経験の足りなさが気になる」。

 9月2日のアジアカップ予選サウジアラビア戦の前日会見で、オシム監督はそう話していた。そして、翌3日、指揮官の心配は残念ながら的中した。日本はジェッダでサウジアラビアに1−0で敗れ、予選A組の首位の座を元アジア王者に明け渡し、勝ち点3差で2位に後退した。(本大会へはグループ上位2位までが進出できる。)

 日本は前半からミスが多く、パスがつながらずに、自分たちのリズムを作れない展開が続いていた。この試合唯一のゴールとなった後半29分の決勝点は、そういうミスの多さを象徴するかのようなものだった。

 中盤でMF遠藤がMF鈴木にパスを出した後、鈴木はそのボールをそのまま遠藤に戻した。ところが、リターンボールが来ると予測していなかったのか、遠藤のボールへの対応がわずかに遅れた。そのわずかなズレを相手は見逃さなかった。

 サウジのワールドカップメンバーでもあったMFアミンはすかさずボールを奪い、そのまま前線へ上がってシュートを放った。彼のシュートは闘莉王に当たったが、ペナルティボックスの右サイドへこぼれたボールにFWドサリが鋭く反応し、素早く右足を振り抜いた。

 日本は8月のイエメン戦(2-0)と同じ布陣で臨んだが、フォーメーションは違った。4バックでスタートしたが、立ち上がり早々にボランチの阿部が相手の2トップのひとり、FWエイサのマークにつくためにディフェンスラインに下がり、闘莉王、坪井と3バックを形成した。

 阿部は最終ラインで、相手の危険なボールを処理し、再三ピンチの芽を摘む活躍を見せた。だがその一方で、彼の抜けた中盤にはMF鈴木が独りで残されてしまった。その結果、浦和MFは、中盤を支配しようと人数をかけてきたサウジへの対応に追われるばかりになってしまい、日本には攻撃を組立てるフィード役がいなくなってしまった。

 途中からMF遠藤が何回か下がり目にポジションを取って、人手不足はある程度補われたが、中盤は間延びしがちなまま、うまく連携することができなかった。結果的に、試合開始15分間にボールを失い続けたプレーと合わせて、相手の攻撃を助け、自らを苦しめる形になったといえる。

 状況を見て自分たちで判断して対応するという点では評価できる動きではあったと言えるかもしれないが、そこで問題が生じた場合の対処という面では、まだその力を備えていないようだ。

 それもこれも、“国際試合の経験のなさ”ゆえに、戦況を見る余裕がないということなのか。あるいは、高温多湿の気候が思考能力を低下させていたのか。それは試合終盤のパワープレーの場面にもうかがえた。

 ベンチの指示で、センターバックの闘莉王が前線に上がって攻撃参加したのだが、日本の選手は後方でボールを回すばかり。闘莉王の高さと強さを生かしてヘディングを狙ってハイボールを送り出す者は、タイムアップまでの最後の数分間で誰もいなかったのだ。

 オシム監督は、「考えの足りない子供っぽいプレーが多かった」と、一連の思慮不足パフォーマンスを嘆いた。

 Jリーグの試合翌日に日本を発ち、15−16時間の長旅の末に当地にたどり着き、時差と、慣れない厳しい暑さと高い湿度の中、2−3日の調整で試合に臨むという条件が、疲労となって選手に影響していないわけがないだろう。だが、厳しい条件下でのプレーだからこそ、アタマを使わなければ試合に勝つのはより難しくなる。

 次のイエメン戦は移動を含めて中2日での試合になり、しかも2300メートルの高地での戦いになる。再び厳しい条件での試合になるが、その状況でどこまで課題を修正できるのか。勝敗と共にその点にも注目したい。

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