青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER
石川遼が“接待”に開眼!!
「ホスト」になって何をするの?
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byKYODO
posted2009/10/03 08:00
ホストプロを務めたANAオープンで、18歳の誕生日を迎えた石川遼
プロゴルファーは時としてホストになり、ホステスになる。
ホストと聞いてぎらつくネオン街を想像した人は大間違い。たとえば18歳の高校3年生、石川遼でも輝く太陽の下でホストになることがあるのだ。
選手がスポンサー契約を結ぶ企業が主催する大会に出場する時に、その選手は「ホストプロ」、「ホステスプロ」と呼ばれることになる。
客にかしずき、お酌する必要はなくても、きちんと仕事はしなければいけない。
普段以上に増える声援と注目、期待のすべてを力に変えて結果を出す。そして大会を広く世間に宣伝することが望ましい。2年前に、所属するNECの大会で4度目の優勝を飾った福嶋晃子は「私にとってはこの試合はメジャーですから」と話していたこともあるくらいだ。
昨年の石川は、ホストの大会ですべて予選落ちに。
ところが、昨年の石川はホストプロを務めた4試合をすべて予選落ちしてしまった。優勝した翌週に挑んだレクサス選手権で予選落ちした時には「絶対に何もないんだけど、(ホストプロで緊張しプレーに影響するなど)何かあるのかなぁと思わされた」と不思議なジンクスに相当思い悩んだようだった。
大会3日目のホールアウト後には同じくトヨタと契約する丸山茂樹、近藤共弘によるトークショーも開かれたが、本来なら出演するはずだった石川の姿はそこにはなかった。ホストプロとしては痛恨である。
ホスト大会全敗については有象無象の重圧もあったのだろうが、コースとの相性が悪かったことも結果を大きく左右した。石川のホスト大会はどちらかといえば、豪快さよりも精度の求められる難コースばかり。両サイドに迫る林が視界を狭めることによりティーショットに圧力をかけ、ドライバーを振り抜いてリズムをつくっていく石川向きではなかったのだ。
そんな石川が今年6月のミズノ・オープンよみうりクラシックでは、ミズノと契約する鈴木亨と同組でプレーする機会を持った。
「やっぱりホストなんだから予選は通らなきゃいけないよ。ホストプロが試合を盛り上げるものなんだし、最終日最終組ならもっと盛り上がるだろ?」
ホスト大会で結果を出せない新米プロにとって、不惑を過ぎてなお賞金シードを保持し続けるベテランの言葉の中に感じるものがあったという。
「去年はたくさんの人に、ホスト大会だからといってプレッシャーを感じる必要はないよと言ってもらった。実際に僕もあまり気にしないようにしていた。でも、やっぱりホストであることを意識して、特別な思いを抱いてもいいんじゃないかって思ったんです」
ホストプロ3連戦をすべて予選突破し快進撃を続ける今季。
自らにプレッシャーをかけることを恐れずにホストとしての役割をしっかりと自覚する。その結果、今年最初のホスト大会となったANAオープン、続くパナソニック・オープンでさっそく予選を通過できた。現在開催中のコカ・コーラ東海クラシックまで続いているホストプロ3連戦で、連続予選突破を決めて嫌なジンクスを払しょくした。
もちろん技術の向上もあるかもしれない。しかし、ちょっとした意識の変化こそが、土壇場での粘りや踏ん張りを生むことになる。ホストプロを意識した上で、支えてくれる多くのファンの気持ちを力に変えていった。石川遼は、そうやって難コースに立ち向かう強い力を獲得しつつある。