チャンピオンズリーグの真髄BACK NUMBER
クビが飛ぶ。
text by
杉山茂樹Shigeki Sugiyama
photograph byREUTERS/AFLO
posted2009/03/05 00:00
アトレティコ・マドリーの監督が、ハビエル・アギーレからアベル・レシーノに交代した。
昨季のアトレティコは、国内リーグ第4位。スペイン国内では、レアル・マドリー、バルサに次ぐ2番手グループだ。3~5位に収まっていれば常識的なポジションだと言えるが、7位以下になるとファンは黙っていない。
定位置から2、3位後退した位置を2、3週間続けると、監督交代が囁かれる。これが欧州における監督交代の常識。暗黙のお約束といってもいい。Jリーグに定着していない常識だとも言える。
それまで高い評判を得ていた監督でも、あっさりクビを切られる。アギーレのクビは、8位に沈んだ瞬間、綺麗に飛んだ。2002年W杯でメキシコ代表を率いてベスト16入り。翌シーズン、弱小オサスナの監督に就任するや、チャンピオンズリーグ出場圏内に押し上げた実績も、一瞬にして過去のモノになったわけだ。
しかし、それはそれ、これはこれだ。
とりわけ、日本人としては、アギーレという一人の優秀な指導者が、フリーな立場に身を置くことになったと考えるべきである。
僕は最近、ある雑誌に「チェルシーの監督をクビになったルイス・フェリペ・スコラーリを、日本代表監督に!」と書いているが、こうなると、アギーレもその一人に加えたくなる。日本のようなビッグではないチームの監督を任せるなら、むしろスコラーリよりアギーレのほうが適任だ。
今日的なサッカーを代表する監督であることは間違いない。サイドハーフの役割を重視した、ピッチを広くバランス良く使うサッカーであり、ボールの奪い方(奪われ方)にこだわるサッカーをする。
いっそのこと、アトレティコで両サイドMFを担当するマキシ・ロドリゲスとシモンも、アギーレと一緒に欲しいものだ。彼らのようなタイプが、日本の中盤選手には決定的に欠けている。縦と横、内と外、攻撃と守備、ドリブルとパスなどなど、バランスに優れたサイドハーフが日本にはいない。真ん中に固まって「パスパスサッカー」に陥る最大の原因だ。
少なくとも、チャンピオンズリーグのベスト16に進出したチームに、岡田ジャパンと同じ傾向を持つチームは一つもない。ピッチに同じデザインを描くチームはない。
唯我独尊の島国サッカーにメスを入れてくれる外国人監督が、いまこそ望まれている。チャンピオンズリーグを見ていると、日本サッカーの特異性があらためて浮き彫りになるのだ。