バンクーバー五輪 匠たちの挑戦BACK NUMBER
スケート界の“レーザー・レーサー”?
ウエアを巡るハイテク開発競争。
text by
茂木宏子Hiroko Mogi
photograph byKeisuke Koito/PHOTO KISHIMOTO
posted2010/02/13 08:00
異なるメーカーが同じコンセプトでまったく違う製品を作る!?
ミズノが日本のほかドイツチームにもスケートスーツを提供するのに対して、デサントはカナダチームからの「よその国には着させないでくれ」という要望を受け入れ、最新スケートスーツに身を包むのはカナダの選手だけ。今シーズンで引退を表明しているウォザースプーンや、女子のメダル有力候補クリスティン・ネスビットらに何としてもメダルを取らせたいという意気込みが感じられる。
ミズノもデサントも、空気抵抗を低減させることと選手の動きやエネルギーをサポートすることが開発の基本コンセプトになっている点は同じだ。異なるのは――編み物(2ウェイトリコット)なのか織物なのか、凹凸なのか滑らかな曲面なのか、動作サポート機能を1枚のスーツに搭載するのかアンダーシャツとの組み合わせにするのか――といったアプローチの仕方にある。
もちろん、こうした開発の目的は風洞実験で優秀な成績を収めることではなく、生身の人間がこれを着て五輪のレースで勝つことにある。どちらのスーツが優れているかは、着用した選手の成績が証明してくれる。
それにしても、世界で勝つのが大変な時代になった。新たな開発のためにCGを使って動作解析をしたり、大がかりな風洞実験を繰り返すのはもはや当たり前。1人の選手を勝たせるために費やすお金と時間と労力は増大するばかりだ。
最終的に勝利するのは選手だが、決して1人の力で勝てるわけではないのである。