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ヌマンシア福田健二の胸の内。 

text by

鈴井智彦

鈴井智彦Tomohiko Suzui

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photograph byTomohiko Suzui

posted2007/05/10 00:00

ヌマンシア福田健二の胸の内。<Number Web> photograph by Tomohiko Suzui

 ソリアの朝は冷えた。5月の最低気温はバルセロナと比べると10度も違うだけあって、夜はマイナス5度まで下がる。バルセロナではTシャツ。ソリアではダウンを着込むほど違いがあった。

 ソリアの人口は3万7200人。その小さな町にあるクラブ、ヌマンシアは4000人の会員を持つ。小さなクラブのスタジアムは9500人収容し、ロス・パハリートス(小鳥たち)と呼ばれている。

 スペイン2部リーグ、36節。ヌマンシア対サラマンカ。仲間たちと集合写真に収まった福田健二はいつものようにセンターサークルに近づいた。キックオフ。序盤から飛ばした──。

 「前半のうちにゴールを決めておかないといけませんでしたね。ここ4試合は勝利がないんです。すべて引き分けでして。いまは昇格も降格もない中途半端な位置にいるので、モチベーションの保ちかたが難しい。でも、ゴールが欲しかったです。はぁ〜……」

 今シーズンは7ゴールを記録しているが、久しくゴールがない。そりゃ、ため息もでる。あと3得点あげれば、ベスト10入りだし。

 名古屋グランパス、FC東京、ベガルタ仙台と移籍を繰り返した福田だが、そもそも習志野高校を卒業したときにはエリートの道を進むものと思われていた。それまでのコースを順調にたどれば、ゆくゆくは日の丸を背負ってもなんら不思議でもなかった。

 1997年、マレーシアで行われたU−20世界大会では柳沢と永井に次ぐ3番手のFWだったが、その実力は折り紙付きだった。ちなみにこの大会の初戦はスペインで、アングロやアルベルダ(ともにバレンシア)と戦っていたりする。

 日本代表にはDFに宮本恒靖、戸田和幸がいて、MFには広山望、中村俊輔らがいた。97年のメンバーの多くは、その後日本を飛び出した。また、習志野高校とU−20でチームメイトだった御厨景などは、引退後、海外に憧れてオーストラリアに旅立ち、ワーキングホリデーをして過ごした。いまは一般企業で働いているという。

 人生、いろいろだ。

 2004年、福田健二がベガルタ仙台の次に選んだ道はパラグアイである。と思えば、翌年はメキシコにいた。2006年にはスペインに住んでいた。スペイン2部のカステジョンと契約したと思ったら、今シーズンが始まる前には7度目の移籍をしていた。

 ヌマンシアで背番号24のハポネス。ケンジ・フクダ。

 気になるのは来シーズンだ。地元記者もファンも口々にいう。

 「どうするんだ、契約は?」と。

 本人はこういう。

 「わかりません。ベガルタ次第です。仙台を出て3年も経ちますので、もし続けるならヌマンシアに買ってもらいたいのでしょうか。2年の契約延長のオファーを受けていますし、ボクは残りたい」

 福田が挙げた7ゴールにゴイコエチェア監督も満足しているのだろう。それゆえの2年延長だ。ゴイコエチェアは現役時代、あのマラドーナの足を砕いたことで有名だが、ヌマンシアのスタイルはフィジカル重視ではない。福田も馴染んでいる。気迫も感じる。

 何よりも、言葉に不自由していない。

 シャワーを浴びてきた福田は、サラマンカの選手に声をかけた。メキシコ時代の友人なのだろうか?彼はまだ若く、カナダで行われるU−20世界大会に出るという。

 「日本も出るんでしょ。ボクもいくよ」と。誰なんすか?

 「彼、ベラっていいまして、ペルーでのU−17世界大会で得点王になった将来有望な選手で。いまはアーセナルからのレンタルでサラマンカにいるんです。メキシコではほんと英雄でしたよ」

 16歳のとき、アーセナルが5ミリオンユーロで獲得したという少年だ。EU外の選手だからプレミアではプレーの許可がおりなくて、困ったアーセナルはセルタに預けた。でも、セルタは2部に落ちるし、ベラは外国人枠の関係で出番がなかった。そんなとき、サラマンカが手を差し伸べた。

 「ボクはサラマンカにもう1シーズン残るよ。そうすれば、スペインのパスポートが手に入るんだ」

 なるほど。プレミアでもプレーできると。アーセナルは賢い。スペインのリズムで学ばせて、EUのパスポートも得るなんて。

 アディオス。別れの挨拶を交わした福田とカルロス・ベラの手には、互いのユニホームが握られていた。

 来シーズンもまた、ふたりの勝負は訪れるのだろうか。

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