岡田ジャパン試合レビューBACK NUMBER
キリンカップサッカー2008
VS.パラグアイ
text by
木ノ原句望Kumi Kinohara
photograph byNaoya Sanuki
posted2008/05/30 00:00
ワールドカップアジア地区3次予選オマーン戦を1週間後に控えた、5月27日のキリンカップ第2戦で、日本は90分間冴えないまま、パラグアイと0-0で引分けた。
24日のコートジボワール戦から先発メンバーを7人代えて、フォーメーションも1トップの後ろに3人並ぶ形で臨んだが、チャンスらしいチャンスも作れないままだった。
「このメンバーでいったら、ある程度、こうなることはわかっていた」と、岡田武史監督は試合後の会見で話し、「トライして、見えてきたことがある。自分としてはよかった」と言い添えた。
停滞も予想したうえで敢えて使いたかった組み合わせとは、現岡田体制になって初めて代表でプレーするMF中村俊輔を中心に、遠藤保仁、山瀬功治、中村憲剛、鈴木啓太の中盤、そして1トップのFW巻誠一郎という布陣だ。
昨年のアジアカップを戦った日本代表の核となったのが、中村俊輔、遠藤、中村憲剛で、その3人の後ろ、あるいは脇を固めてくれたのが鈴木だった。
中村俊輔も「(前監督の)オシムさんのときからやっているメンバーとは、イメージが合っている」と話している。
オマーン、タイ、バーレーンとのW杯予選4連戦が迫っているが、けが人や不調者を多く抱え、チーム作りは順調に行っているとは言いがたい。そこで、俊輔・憲剛のダブル中村と遠藤の3人を土台にチーム構成を図りたいという考えが、岡田監督にはあったのではないか。巻もオシム体制で中心になってプレーしてきた実績がある。
だが、残念ながら、巻はケガ上がりのせいか、以前ほどの運動量もキレもなかった。遠藤や中村らパッサーのボールに絡むわけでもなく、相手マークをかわしたり、競り勝つというのでもない。FW高原直泰が不調という現状で、巻がどこまで出来るのか見たかったのだろうが、彼のようなタイプを使うのであれば、ドリブルで仕掛けるような突破型のウィングを組み合わせた方が効果的だった。
この日、立ち上がりには、山瀬がゴール前に走り込んだり、DF闘莉王が攻め上がって中村俊輔のロングボールにヘディングで合わせたり、また前半終了前には中村憲剛がミドルシュートを仕掛ける場面もあったが、全体にボールを保持しながら、仕掛けることができない状態が続いた。
後半スタートから遠藤に代わってMF松井大輔が投入され、その後、MF長谷部誠、FW大久保嘉人らも送り込まれたが、いずれもボールを持ってから次の手を考える傾向があり、展開が滞る場面も少なくなかった。
松井も左サイドバックの長友もこのチームでは2試合目。他にも、最終ラインに寺田周平、右サイドバックに阿部勇樹が起用されるなど、新しい試みもあり、そういう難しさもあったかと思う。
ある程度の停滞は予想していた岡田監督だったが、試合後には「じれったい展開だった」と話し、その台詞からは、指揮官が期待していたほどの組み合わせ効果が出なかったことがうかがえる。
だが、どういう選手の組み合わせでも、チームに必要不可欠な基本的な動きというものがある。昔、ハンス・オフト日本代表監督が「トライアングル」と表現し、その後も多くの指導者がそれぞれのチームで徹底させている「3人目の動き」だ。それは代表チームでも変わらない。中村俊輔も「ボールは回せているけど、3人目の動きがむずかしかった」と振り返った。
3人目がうまく出て来ないのは、相手に守備を固められた影響もあるが、やはり、自分たちがどう試合を動かすか、という共通認識がチームとして出来上がっていないためだろう。
「自分の発想だけでやらないで、まずチームで合わせて、それから突っかけるとかしないと……」と中村俊輔は言う。
むやみに個人技に走るのではなく、まずはチームプレーを徹底し、その上で、個人が持っているそれぞれの技術や能力を出していく方が効果的だと、セルティックMFは指摘する。
日本人選手の技術は世界的にも認められている。それをフルに生かせるのも、組織としてのチームがあってのこと。そういう認識を各選手が持って臨むことが必要であり、重要になる。貴重な指摘だろう。
彼以外のメンバーもこうした意識の持ち方ができるか。そこが、このチームの成長と成否を左右するのかもしれない。