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【番外編】WBC選手発表に見る不安 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byYUTAKA/AFLO SPORT

posted2008/12/26 00:00

【番外編】WBC選手発表に見る不安<Number Web> photograph by YUTAKA/AFLO SPORT

 ストーブリーグの報道を見る限り、このオフ最大の話題の1つが、来年3月に行われるWBC関連のニュースだったのは間違いない。一連の監督就任騒動から先日行われた日本代表第1次候補34選手の発表まで、こぞってメディアが大々的に取り上げた。

 これまで今コラムや自分のブログ等で、2連覇は決して簡単ではないが、日本代表チームに一枚岩となって戦う体制が整えば、それなりの戦いができるという持論を展開し、原辰徳氏の代表監督就任は非常に好意的に捉えていた。というのも、選手や球界関係者から、原監督が現役時代からずっと選手から信頼される人格者だという数え切れない証言を得ていたからだ。選手をまとめ上げられるだろう最高の人選だと思っていた。それを証明するように、原監督自らが代表候補 44選手に対し手紙を送ったと明らかにしたニュースに接し、ますますその思いを強くしたものだった。だがそんな気持ちも一変、15日の第1次候補発表の記者会見で足下をすくわれたような感覚に陥っている。

 今更ながら各メディアをチェックしても、会見前は一斉に「第1次候補44選手が発表」という論調だった。もともとWBCの規則でキャンプには45選手を招集できるのは周知のことだが、事前に松井秀喜選手が出場を辞退したことで、原監督は残り44選手に手紙を送っていたことで、誰もがその全選手が第1次候補に名を連ねるものだと考えていた。だが実際に蓋を開けてみれば、この時点で10選手が削られ34選手の招集に留まったのだ。

 「コンディショニングというものを考慮すれば、このメンバーが100%だと思う」

 「候補選手ということなので、34名のメンバーはコンディショニングが良いのであるならば、間違いなく宮崎には集まっていただく。しかし、選手にとって一番重要なのはコンディション。そのコンディショニング次第では、今日発表していない選手たちも大いにありうる」

 以上の2つのコメントは、原監督が第1次候補発表会見で口にしたものだが、個人的にはどうしても矛盾を感じてしまうのだ。後述の発言は、「3月5日の第 1次ラウンドに直前にコンディショニングのいい選手でチームを組みたい」という意味に受け取れるものだが、前者は明らかに「現時点でコンディショニングのいい選手を招集した」ということなのだ。なぜキャンプも始まっていない現時点で、そこまでコンディショニングに留意しなければならないのだろうか。

 さらにコンディショニング次第では、今回の34選手以外にもキャンプに招集する考えがあるなら、最初から上限の45選手を呼び、その中で最もコンディショニングのよい28選手を選んだ方がより合理的だと思うのは自分だけなのだろうか。

 また第1次候補に漏れた松井稼頭央選手の所属事務所や西岡剛選手の発言によれば、彼らは原監督から手紙を受け取りながら候補から外された10選手のようだが、明らかに不信感を募らせているように思える。自分が聞いたところでは、戦力外になった巨人選手に自ら電話で説明するような気配りを欠かさない原監督ならば、もっときちんとしたかたちで事前連絡ができなかったのか疑問が残る。

 さらに松井稼頭央選手の所属事務所の話として、NPBからもWBC協力依頼の電話が何度もあったように報じている。このあたりも原監督とNPBの間できちんとした意思統一ができていたのかも疑わしく思えてくる。その後コンディショニングを理由に黒田博樹投手が出場辞退を明らかにしたことで、対応のちぐはぐさがより鮮明になってしまったのではないだろうか。

 これまでも何度となくNPBの対応に疑問を呈してきたが、今回も日本代表チームに全面協力を表明しながら、第1次候補に選ばれた日本人メジャー選手を完全に野放し状態にしていないだろうか。他の候補選手たちは2月1日から代表キャンプ開始の2月15日まで、自分の所属チームのキャンプに参加できる。現在の報道に接する限り、メジャー選手たちに関してはそれぞれの自主性に任せている状態のようだ。もうすでにMLBからWBC参加予定の日本人メジャー選手はメジャー・キャンプ参加免除が発表されているのだから、本来なら代表チームを管轄するNPBが彼らの受け皿を積極的に用意するのが筋ではないだろうか。

 北京五輪でメダルを逸した理由の1つとして、代表チームに一体感がなかったと指摘する声がある。自分自身もそれが最大の理由だと考えるし、その原因はチーム内で起こった“小さなほころび”の積み重ねだと思っている。第1次候補発表後に何人かの選手や関係者と話をしていると、やはり今回の措置に疑問を抱く人が少なくない。“小さなほころび”にならないことを祈るばかりだ。

西岡剛
原辰徳
黒田博樹

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