加藤大治郎コラムBACK NUMBER
鈴鹿でのGP休止が訴える本当の「安全」とは。
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph byVEGA INTERNATIONAL
posted2003/09/09 00:00
鈴鹿サーキットは、このほど、2004年のロードレース世界選手権(WGP)の開催休止を決めた。9月19日、鈴鹿サーキットとFIM(国際モーターサイクリスト連盟)から同時に発表されたリリースによると、長期的な展望でコース改修に着手し、2005年の開催に向けて安全性を高めたい、ということだ。
今年の4月、日本GPで加藤大治郎選手が亡くなるという痛ましい事故が起きている。これをきっかけに、MotoGPクラスに出場する選手たちは4人の代表を選出し、GPを運営するDORNAとコースの安全性について協議を行なってきた。その中で、鈴鹿サーキットに対しては、選手たちから多くの改善要求が出された。そして、来年の開催までにそのすべてを改修するのは不可能だという判断で、休止が決まった。
問題は、数箇所に及ぶ。特に、セーフティーゾーンが狭く、そのために、転倒した際の身体のダメージが大きいこと、コースアウトの際に危険回避のためのスペースが少ないことが挙げられている。これは2ストローク500cc時代から言われていたことだが、4ストローク990ccになって、よりスピードがアップし、選手たちからさらに厳しい改善要求が出されることになった。
レースは、いつの時代も、事故と無縁ではいられない。しかし、コースの安全性を高めることで、最悪の事態を回避することができるのも事実である。そのために、伝統的なサーキットの多くが面影を残さないほどの大幅な改修工事を行なっている。鈴鹿もこれまで幾度かのコース改修をしてきたが、ここにきて抜本的な対応に迫られた。今回の休止決定は正しい判断であり、WGP開催に向けて一日も早く大幅な改修に着手してもらいたい。
今回の発表では同時に、FIMから、グランプリに参加するバイクメーカー6社で組織するMSMAに対して、より安全性を高めるバイク作りが要求されている。バイクの性能とコースの安全性は常に表裏一体であり、切り離して考えられるものではないことを示唆している。安全は、様々な面から常に論議されるべきテーマだ。事故から学ぶものであってはいけないということでもある。今回の開催休止の発表は、これからのMotoGPのあり方を考えるいい機会なのかもしれない。