MLB Column from WestBACK NUMBER

盛り上がるストーブリーグ〜それぞれのシーズンオフ 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGettyimages/AFLO

posted2004/12/27 00:00

盛り上がるストーブリーグ〜それぞれのシーズンオフ<Number Web> photograph by Gettyimages/AFLO

 12月上旬にアナハイムで行われたウィンターミーティング以後、ストーブリーグが一気に活況を呈している。特に、ランディー・ジョンソンや石井一久投手ら10選手を巻き込んだヤンキース、ダイヤモンドバックス、ドジャーズの3チーム間トレードは、最終局面で不成立に終わったとはいえ、ここまでオフ最大の話題となった。結局ドジャーズが退いてしまったため頓挫したのだが、すでにジョンソンはヤンキース移籍を承諾しているようで、近々別のかたちでトレードが成立するというのがもっぱらの観測だ。

 それにしてもヤンキースの病的なまでの選手補強は相変わらずとはいえ、ドジャーズの迷走ぶりはどうしたのだろうか。今回のトレード騒動が表面化すると同時に、「何のメリットもないトレード」と散々の避難を浴びたと思ったら、まったく同じ理由で撤退してしまったデポデスタGM。そんなことは交渉中に理解できることだと思うのだが……。まったくGMの真意が読めない。

 さらにGMは、今回浮上した石井投手やショーン・グリーンなどが仮にこのままドジャーズ残留となった場合、彼らがどんな心情を抱くのか考えたことがあるのだろうか。日本以上にビジネス色の強いメジャーでは選手の移籍が日常茶飯事といえ、選手は単なる商品ではない。それぞれに感情を持っている。気持ちの持ちようで彼らの成績も大きく変わってくるものだ。長年メジャーを取材してきて、監督の起用法に不満を抱いたり、トレード騒動で嫌気がさして成績を落とした選手を何人も見てきている。

 ハーバード大出身の若手エグゼクティブとしてGMに迎え入れられたデポデスタ氏だが、シーズン中彼が現場に出てきて選手たちと談笑するシーンを見ることは稀だったような気がする。選手をデータだけで動かすのは簡単だ。しかし、英語でいうところの「Team Chemistry(チーム内の相性とでも訳せばいいか)」を機能させなくては、本当の意味で強いチームは作れない。自分たちのチーム環境で100%の実力を発揮できる選手を見つけ出すことこそ、GMの手腕が問われると思う。果たして来年のキャンプをどんなかたちで迎えることができるのか。もうしばらくデポデスタGMの実力を見届けるべきだろう。

 ところで、オフというのは選手やコーチだけの契約期間ではない。チームの裏方さんたちにとっても重要な時期だ。昨年この時期に取り上げたことがあるのが、選手に限らず裏方の世界でも日本人のメジャー進出が、その裾野を広げている。しかし一方で年々厳しくなる就業ビザ取得の問題が絡み、彼らのリクルート活動は困難さを増しているのが実情だ。

 そんな中、個人的に親交のある人たちが何とか幸運をものにしている。

  昨年マーリンズ行きが内定しながらビザ取得問題でご破算になったことを紹介したトレーナーの中島陽介くんが、今年1年間ドジャーズでのインターン生活を経て、ドジャーズと契約。ようやく来シーズンからルーキーリーグ担当トレーナーとして本格始動できることになった。

 また今年はロッキーズ傘下の1Aでコンディショニングコーチを務めていた正本尚人くんが、来シーズンからカブスのマイナーリーグ・コーディネーター(マイナーリーグ全体のコンディショニングを担当)に就任することになった。数年後にはメジャーのコンディショニングコーチを狙える位置までこぎつけた。さらに先日のことだが、正本くんの紹介でパドレスのルーキーリーグでコンディショニングコーチを務める大村佳くんと知り合うことができた。彼もすでに来シーズンの契約が決まっているということだ。

 逆に、今年パドレスで大塚投手についていた高橋純一くんは、来年は活躍の場を日本に移し千葉ロッテでコンディショニングを担当するという。

 ここで紹介した3人だけでなく、まだまだ多くの日本人の若者たちがメジャー球界で働いている。そして彼らの多くが皆1年契約しか結べない立場にある。とにもかくにも彼らの健闘を祈るばかりだ。

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