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セリエA再生、まずは審判から。 

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酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2006/05/26 00:00

セリエA再生、まずは審判から。<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 5月16日、イタリアサッカー協会、カラーロ会長の辞職に伴い、CONI(国内オリンピック機構)が同協会再生委員会を結成した。相次ぐ不祥事で激動するイタリアサッカー界が、ようやく再生のために動き出したのである。

 差し当たり、再生委員会はクラブの幹部らに扇動された審判委員会の信用回復のため、国内リーグにおける外国人レフェリーの導入を打ち出した。かつてローマのラボで行われていたドーピング検査が、スイス・ローザンヌの研究所の管轄となってセリエAが清潔さを取り戻したように、今回も外国人の力を借りて浄化を図るというものだ。

 セリエAにおいて外国人レフェリー起用は現実的に可能なのか?

 審判委員会がフェアな機関として独立を守ることを前提とすると、外国人レフェリーの導入は理に適っている。そもそも審判員を巻き込んだ一連のスキャンダルは、クラブ側の圧力が原因だった。そのため、外国人レフェリーを不意打ちで起用すれば、圧力をかける隙もなくなる。外国人レフェリーの確保も、ウィンターブレイクを実施するドイツや北ヨーロッパの審判員であれば、彼らの本職(本国リーグ)に差し支えることもない。

 斬新とされるこの案だが、実は、過去にも実施されていたことがある。

 1955−56年シーズンのセリエAで、シーズン終盤の順位争いがかかった大事な試合が外国人レフェリーのホイッスルに託された。試合が「公平」になるために、欧州カップ戦やW杯と同じ感覚で審判員にも中立が求められたためである。この施策は、以降4シーズンにわたって行われた。

 逆に、イタリア人レフェリーが国外リーグで笛を吹いたこともある。2003年11月、UEFAがリーグ戦での外国人審判員の起用を認可したことで、イタリア人レフェリーをはじめとするヨーロッパ各国の審判員がロシア、イスラエルへ「国外出張」し、「公平且つクリーン」という面で成果をあげている。

 しかし、5月24日、各クラブのオーナーたちが一同に会したプロリーグ連盟では、残念ながら外国人レフェリー導入案に反対の声が相次いだ。オーナーたちは、外国人審判員のレベルの低さに言及し、あくまで「国産のレフェリー」を主張したのだ。イタリアサッカー界が世界中から疑惑の目にさらされているというのに、彼らの腰は重い。イタリアサッカー協会と同じで、再生に向けた決断力のなさは相変わらずである。

 審判委員会の再生プロジェクトでは、日本でもおなじみのピエルルイジ・コリーナ氏がメンバーに加わり、外国人レフェリーの起用にとどまらず、審判のプロ契約制度、若手審判員育成のための試合数縮小、さらに女性審判員の登用も検討されている。

 果たして来季のセリエAはどうなるのか。ピッチには外国人レフェリーが、そして女性審判員が立つのか。再生委員会とプロリーグ連盟の戦い。イタリア国民は、もちろん前者の勝利を願っている。

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