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ブンデスリーガ、得点王の呪い。
~グラフィッチ不振の真相?~ 

text by

ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byGetty Images

posted2009/10/30 10:30

ブンデスリーガ、得点王の呪い。~グラフィッチ不振の真相?~<Number Web> photograph by Getty Images

CLベシクタシュ戦で一発退場。グラフィッチは本当に呪われている?

監督との確執がグラフィッチ不振の原因か。

 グラフィッチが「呪い」にかかった原因は何だろうか。いくつか考えられる。

 まず、アルミン・フェー監督と折り合いが良くなく、気分よくプレーすることが出来ていない。たとえば、10月3日のボーフム戦のことだ。この試合で精彩を欠くプレーを続けたグラフィッチは、後半の7分にオバフェミ・マーティンスと交代させられてしまった。すると……。

「あの交代は敬意を欠いているよ! オレはこのクラブで歴史を作ってきんだぜ? あんな時間で交代させられる選手じゃないはずだ」

 グラフィッチは記者たちに不満をぶちまけてしまう。当然、この発言はフェー監督の耳に入り、ちょっとした騒動にまで発展した。クラブへ罰金を払うかわりに、心臓病を患う子供たちのためにグラフィッチが1万ユーロを寄付することで一応の決着を見たが、次の試合ではベンチスタートを余儀なくされてしまった。

得点王は張り子の虎? 帳尻合わせ的なゴール内容。

 また、昨シーズンの彼が記録したゴールには、ちょっとしたからくりがあるのをご存じだろうか。昨シーズンの彼が決めたゴールは、弱い相手からのゴールや、試合の行方がほぼ決まってから挙げたゴールが多いのだ。

 相手にリードを許している状態で決めるゴール・同点に追いつくゴール・同点の状況で決めたゴール(先制点含む)を、「ここ一番でのゴール」とする。

 それ以外――つまり1点以上リードしている状態でのゴールを、「それ以外のゴール」とすると、グラフィッチはどのような局面でゴールを決めていたか。

 昨シーズンのグラフィッチは、28得点をマークしたが、そのうち8ゴールはPKによるもの。フィールドゴールの内訳は、「それ以外のゴール」が14点であるのに対して、「ここ一番でのゴール」数が6点だけだ。チームが苦戦しているときにゴールを決めていたわけではない。

 2トップを組むジェコはどうか。26ゴール中14ゴールが「ここ一番でのゴール」。しかも、PKはゼロで、すべてフィールドゴールだった。

シビアなゲーム内容が「呪い」の効果を強める。

 上のデータはグラフィッチの得点王の価値を貶めるものではない。だが、今シーズンのヴォルフスブルクの戦いぶりをここに当てはめてみると、グラフィッチがゴールを決めづらい状況にあることが、よく分かる。

 昨季のヴォルフスブルクは、ホームゲームで16勝1分けと無類の強さを誇った。しかし、今季はホームでの5試合を終えてすでに2敗を喫している。アウェーも含めて、どうにか勝ちを拾うようなゲームが多く、グラフィッチにとって“おいしい”場面があまりないのだ。

【次ページ】 危険行為で一発退場。休暇で悪循環から抜け出せるか。

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