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身長でも体重でもない世界との差。
日本ジャンプ陣に必要な条件とは?
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Number編集部Sports Graphic Number
photograph byREUTERS/AFLO
posted2010/02/21 21:00
大会9日目の2月20日、ジャンプのラージヒル個人がウィスラー・オリンピックパークで行なわれた。
結果は、スイスのシモン・アマンが優勝。1本目144m、2本目138mと、他を圧倒する飛距離と安定感を見せ、13日のノーマルヒル優勝に続く2冠を達成した。
ジャンプ会場では、地元カナダだけでなく日本の旗も見受けられた。だがそれ以上に、スイス、オーストリア、ポーランドといった欧州の強豪国から応援に駆けつけた観客たちが特に多くいたように思う。無数にはためくジャンプ強豪国の旗と、歓声を上げる観客たち。その圧倒的な応援団の多さが、まるで日本ジャンプ陣の前にそびえ立つ世界の壁にも感じられた。
では日本の選手たちの結果はどうだったかというと、日本の葛西紀明は8位入賞と健闘したが、伊東大貴は20位に終わっている。竹内択と栃本翔平は1本目で上位30位に入れず、2本目に進めなかった。
かつては日本のお家芸とまで言われたスキー・ジャンプである。外国人に有利なルール改正など、さまざまな過去の経緯はあったにせよ、現在の日本ジャンプ陣の低迷はどうしたことなのだろう。日本人選手には何が足りないのだろうか。
他のスポーツでもよく言われる体格差ということではなさそうだ。優勝したアマンは173cm、58kg。2位ポーランドのアダム・マリシュは170cm、54kgである。葛西が176cm、59kg、伊東大貴が172cm、56kgであることを考えると、数値的には日本人選手とさほど変わらない。
スキー板もスーツも“V字ジャンプ”も差が無い時代だが……。
日本が一時代を築いた「V字ジャンプ」も今やすべての選手が採用し、ある特殊な飛型の選手が有利ということでもない。
スーツにしてもメーカーの開発は日進月歩で進んでいるが、素材や厚さ、通気量など厳密なレギュレーションが定められ、メーカーごとの差は出にくい状況にある。
スキーの他の道具にしても然り。
風向きは大きな要素と言われるが、1本だけならともかく、運だけで1本目、2本目と勝ち続けることはできない。
では、その差を生み出すものとはいったい何なのか。