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身長でも体重でもない世界との差。
日本ジャンプ陣に必要な条件とは?
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Number編集部Sports Graphic Number
photograph byREUTERS/AFLO
posted2010/02/21 21:00
「力まずに飛べた」 葛西の2本目は大ジャンプに。
極端にパワーが違うわけではなく、技術的にもそれほど差が無いのだとしたら……どんな条件でも安定してすべての条件をまとめることができる、選手のメンタルの強さがその違いの大きな要素となっているのではないだろうか。
「力まずに飛べました」という葛西の2本目は、21位から8位入賞へと自身を大きく躍進させる135mの大ジャンプとなった。
「1本目は、まさかゲートがあそこまで下がるとは思っていなくて、焦りもあったし、力みもあった。スタートの合図も遅かったし、風も良くなかったと思います」
スタートのゲートの位置は、前のジャンパーたちの飛距離しだいで直前に変更されることがある。そうなったときでも、追い風で不利なときでも……動揺することなく、選手はあらゆる状況に対応する力を磨かなければならない。
それは37歳、6度目の五輪出場となる葛西にしても容易ではないのだ。
試合後のインタビューで、銅メダルを獲得したオーストリアのグレゴア・シュリーレンツァウアーが、「ジャンプの秘訣とは?」との質問に「滑って、そして飛ぶだけだよ」と答えていた。
はぐらかされたと感じたのか記者はバツの悪い顔をしていたが、本人は至って真剣な表情である。
「滑って、飛ぶ」
ただそれだけの動作であれほどまでの違いが出るジャンプ競技。シンプルながら奥の深い競技だとあらためて思った。