スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
“ソ連”の凋落と中国の台頭。
国家戦略としての五輪スポーツ。
~カーリング女子・中国代表の凄さ~
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byTakuya Sugiyama(JMPA)/Getty Images
posted2010/02/19 16:50
素人ではあるが、カーリング歴4年である。そう、トリノ五輪での「チーム青森」の活躍を見てからプレーを始めたのだ。
今回、カーリングの日本チームはショットの精度が少しではあるが、悪い。カナダ戦は勝ちを逃した印象で、第9エンドで決着をつけられたかもしれないが、肝心なショットの精度が落ちた。
驚かされたのは世界チャンピオンの中国だ。中国は「少しのズレ」でさえまったく見逃さない。特にスキップの王冰玉(ワン・ビンユ/写真右)選手、この人の戦略と技術は図抜けている。
国家戦略として大々的にスポーツを支援する中国。
「スポーツ・インテリジェンス原論」では、中国のカーリングがいかにして強くなったかを紹介した。(『マイナー競技の金メダルは中国独占!? 五輪で顕在化する国家スポーツ戦略。』)
才能を見極め、徹底的に時間とお金を使って強化を進める。しかしこの手法は特別、新しいものではない。
冷戦時代、ソ連と東ドイツは国の威信をかけてスポーツを強化していた。いまや国家的な規模でエリートを育てられるのは中国だけと言っていいかもしれない。夏、冬の種目を問わず、金メダルを狙っていく姿勢には感嘆せざるを得ない。
中国の台頭、さらには韓国もスピードスケートの成長が著しいが、その一方で弱っている国がある。
ロシアだ。
なぜロシアは“冬季五輪の一等国”から堕ちたのか?
日本時間2月19日午後の段階で、ロシアのメダル獲得数は金1、銀2、銅1にしか過ぎない。
内訳は男子クロスカントリーの個人スプリントクラシックで金と銀、男子スピードスケート5000mで銅、そして男子フィギュアのプルシェンコ(写真左)が銀である。
4年後にはソチ・オリンピックを控えているというのに、かつての冬のオリンピックの「一等国」というイメージはもう残っていない。
これは、なぜか?