MLB Column from WestBACK NUMBER
大塚晶則、出色のシーズン。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byA.Tomura/AFLO SPORT
posted2004/05/13 00:00
シーズン開幕してから早1カ月が経過した。開幕から10人の日本人選手がロースターに名を連ねたが、仮にこの中から“開幕MVP”を決めるとするならば、パドレス・大塚晶則投手で間違いないだろう。
ここまで3勝1敗1セーブで防御率1.06。被打率も.138と、メジャーの強打者たちを完全に圧倒している。リリーフ投手の評価基準ともなるホールド数も7個を記録。単純計算してもチーム19勝のうち11試合に大塚投手が貢献していることになる。ここまでパドレスも絶好調。チーム防御率はリーグ2位の 3.60で、チームもドジャースと地区首位を争う。それを支えている主要因が大塚投手なのだ。すでにチームメイトやファンからも、最高のセットアップ投手として絶大な信頼を勝ち取っている。
メジャー公式戦デビューとなった4月6日のドジャース戦では、不運もありサヨナラ負けを喫した。試合後のロッカールームで、着替えもそこそこに険しい表情で一点を見つめたまま動こうとしない大塚投手が印象的だったのを憶えている。しかし、いざ報道陣の前に立つと満面の笑顔を浮かべ口を開いた。
「もうちょっと低めに投げれば大丈夫だと思う。いい経験したと思って次につなげたいと思います」
大塚投手の笑顔に嘘はなかった。翌7日のドジャース戦では1回を三者凡退に抑える好投を演じ、その後13試合連続無失点と快進撃を続けていった。4月10日には通算660本を狙うバリー・ボンズと対戦し、全球真っ直ぐで勝負を挑みショートフライに打ち取っている。
「もともと僕の真っ直ぐは重いんです。それと無意識なんですが、時々左打者に差し込むようにカットするんです。試合で投げていきながら徐々に自分が通用するという自信はつきましたね」
ドジャースの遠征に従いサンディエゴで再会したのが4月13日。わずか1週間で大塚投手が醸し出す雰囲気は明らかに変化していた。マウンド上の立ち振る舞いも、もう新人選手のものではなくベテラン選手のそれだった。大塚投手が活躍を続ける限り、パドレスは油断できない存在であり続けるだろう。
ところでパドレスといえば、前回紹介したジェレッド・ウィーバー投手の近況を報告しておく。5月7日に2度目の観戦に出向き、パシフィック大相手に2安打完封17奪三振で13勝目を挙げる快投を見てきた。さらにバックネット裏にはパドレスのスカウトが何と4人も陣取っていたのを発見。ドラフト1位指名がさらに現実味を帯びてきたようだ。
(本文中成績は、5月11日現在)