Column from EuropeBACK NUMBER
ドタバタ続きのサッカー連盟。
text by
安藤正純Masazumi Ando
photograph byGetty Image/AFLO
posted2004/07/26 00:00
今ドイツ代表の新監督が決まった。ユルゲン・クリンスマンである。80〜90年代に大活躍したFWで、W杯とユーロの優勝経験がある。キャリア、人格、リーダーシップ、どれをとっても文句なしの人材だ。
アシスタントには浦和レッズやカナダ代表監督などを務めたホルガー・オジエクが就任。こちらもコーチとしてW杯優勝を味わっている。また新設のゼネラルマネジャーには史上初めてゴールデンゴールを決めた(96年ユーロ)オリバー・ビアホフが就く。
これで監督選びの騒動に終止符が打たれたが、ここに至るまでは大騒動が続いていた。
DFB(ドイツサッカー連盟)は惨敗したEURO2004決勝戦の翌日、首脳陣4人による緊急会議を開催し、次期監督の人選作業に入った。しかし深夜まで6時間続いた会議でも、結論を引き出すことはできなかった。
就任が確実視されていたヒッツフェルト(前バイエルン)は、DFB会長への不信感からこれを辞退。ベンゲル(アーセナル)は「いまのクラブに集中しているから」と、ニベもない。
ギリシャ優勝の立役者レーハーゲルは「古くさい指導方法」と「ローカルチーム向けの器」「何でも口を出すベアーテ夫人」が嫌われて相手にされない。DFB会長お気に入りのダウム(フェネルバチェ)は4年前の麻薬濫用とブラックビジネスへの関与から、“青少年への影響”を重視する連盟のポリシーに合わない。
最終的に残ったのはPSVアイントホーフェンのヒディンク、EUROでデンマークを率いたオルセン、そしてカメルーンをW杯に出場させたシェーファーの3人だった。それがクリンスマンに決定したことでDFBの本音は“意中の人にプロポーズして、OKの返事をもらった”というところだろう。
第7代監督なったクリンスマンのデビューは来月18日のオーストリア戦(アウェー)。9月にはホームでブラジル戦があり、ここが指導者として最初のハードルだ。
さて人事といえば面白い話がもう1つある。何あろう、会長人事だ。
尊大で独裁的なマイヤーフォアフェルダー会長は10月の次期総会で解任が確実視されていた。しかしそれでは彼の立つ瀬がない。なにしろFIFAとUEFAの大物理事である。経歴を汚し、顔に泥を塗るわけにはいなかいのだ。
そこでDFBは『2人会長制』なる新組織を作ってしまった。これは弁護士でDFB金庫番のツバンツィガー氏が実質的な会長として実務に当たり、マイヤーフォアフェルダーは「挨拶をするだけの役回り」、要するに『お飾り』というもの。なんとまぁ、ウルトラC級の発想である。
土壇場に強いと言われるドイツだが、それももはや過去の話になった。人事でドタバタしたり、奇妙な構造改革をするようだと組織は円滑に動かない。代表チームが、最近いまひとつだったのも、なぜか納得してしまう。
ファンはクリンスマンに、これまでの鬱憤を晴らし暗い記憶を払拭してくれるよう期待をかけている。そういえば、トッテナム時代の彼に付いたあだ名はKlinsmannをもじっての『Cleansman』(清廉潔癖な男)だった。このニックネームどおりにチームを改革してほしいものである。