野球善哉BACK NUMBER
本当は皆メジャーに行きたい……。
日本野球界は菊池の涙に猛省せよ!
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2009/10/26 13:30
川上憲伸、上原浩治らのメジャー行きがあと5年早ければ。
我々、野球ファンが川上憲伸(ブレーブス)や上原浩治(オリオールズ)にあと5年早くメジャーに行ってほしかったと思うように、菊池ら若い選手たちも同じ感情を抱いているのではないか。入ってしまったら、自分もそうなるのではという懸念が生まれてくるのも当然の話だ。
FAを短縮するのも、ドラフト前の交渉も、ひとつの案としてあるが、それだけでは若者には訴えるものがない。というよりも今、若者たちの目に映っているプロ野球の閉塞感を打破しなければいけないのではないか。
規制するよりもまず緩和すべきである。メジャー志向が強くなってきているという現実を受け入れ、解放する方向へと向かわなければならない。それを紳士協定や日本野球のためにといって、規制の柵を張り巡らしているから、田澤や菊池の騒動が起こるのである。
スカウト活動にしても同様のことが言える。甲子園などの全国大会では日本のプロ野球12球団に「スカウト席」が用意されているが、メジャーの球団にはそうしたものがない。排除しているといった方がいいのかもしれない。排除したからといって、メジャーのスカウトが自由に選手を見れないと思ったら大間違いで、「そっちがそうするなら」と奔放に動いてみせる。
スカウトといえば、誰もがバックネット裏で試合を見るとは限らず、球場だけに足を運ぶわけでもない。どこかでチーム関係者と接触を果たし、日本のスカウト以上のことを彼らはしている。実際には「紳士協定」などどこ吹く風なのだ。
若者たちに閉塞感を植えつけ続ける日本のプロ野球界。
ただ、それもこれも彼らを排除するからであり、規制するから起きるのだと思う。
極秘裏にメジャーと関わり、独断で決断を発表した昨年の田澤問題に対し、日本プロ野球組織はドラフト指名を拒否して海外挑戦を選択した選手に関し、復帰制限措置を決めた。しかしこのような規制こそが逆効果で、プロを夢見るイマドキの若者たちに、日本プロ野球界の閉塞感を伝えているだけだということになぜ気がつかないのだろうか?
世間を騒がせた菊池騒動は終焉を迎えたが、昨年の田澤問題と含めて、日本野球界に一石を投じたといっていい。来年のドラフトの目玉と騒がれる早大の斎藤佑樹にもメジャー挑戦が囁かれているが、果たして、プロ野球界はどう変わっていくのだろうか。
規制しているだけでは、明るい未来は見えてこない。