加藤大治郎コラムBACK NUMBER
加藤大治郎選手の悲劇を繰り返さないために。
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph byVEGA INTERNATIONAL
posted2003/05/22 00:00
開幕戦・日本GPで起きた加藤大治郎選手の死亡事故をきっかけに、ライダーたちがコースの安全性を訴え始めた。ライダースユニオンと呼べるような組織の結成には至らなかったが、大治郎選手の事故から3週間後の第2戦南アフリカGPで、WGP・MotoGPクラスの選手たちが結集した。
その話し合いで決まったのは、WGPを運営統括するDORNAに対して、ライダーからサーキットの改善要求を突きつけていこうということだ。そのための代表ライダー4人を選出し、ライダーたちが危険と感じた箇所に関して、翌年の開催に向けて改善要求を提出する。実現しない場合にはボイコットも辞さない、という強い姿勢を示そうとしている。
そのためには、F1ドライバーが結成しているようなきちんとした組織を、という声もあったが、ライダーの入れ替わりが激しいMotoGPクラスでは現実的に不可能だと判断した。レースごとに参加ライダーたちの声を集め、V・ロッシ、S・ジベルノー、K・ロバーツ、青木宣篤の4人の代表が、DORNAに対して要求していくことになった。
死亡事故が起きてからの要求ということで、ライダーの中には遅きに失したという反省の声が多かった。事実、エンジンが4ストロー990ccになってから、2ストローク500cc時代よりラップタイムが上がり最高速も伸びている。500cc時代でも危険箇所が指摘されるサーキットは多かったのだ。時速300kmオーバーが当たり前となったMotoGPクラスでは、今まで以上にサーキットに求められる安全基準が高くなって当然である。
大治郎選手の事故については、ホンダが第三者機関の事故調査委員会に調査を依頼している。現段階で事故原因は解明されていないが、大治郎選手の事故現場を含め、南アフリカでのミーティングでは、鈴鹿サーキットへの改善要求が数多く出されたようだ。
昨年から4ストエンジンが導入されたことで、選手たちはエンジンブローによるオイル漏れという新たな危険とも対峙(たいじ)しなければならない。サーキットは安全なコースを、バイクメーカーは壊れないエンジンを作ることがより強く求められる。ハイスピード時代に突入したMotoGP。ライダーたちの安全を、何よりも優先してもらいたい。