カメラマンが語る:スポーツ写真の魅力とはBACK NUMBER

選手が持つ一瞬の美を写真に写し取る。 

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福本悠

福本悠Yu Fukumoto

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photograph byNaoya Sanuki

posted2010/01/12 10:30

選手が持つ一瞬の美を写真に写し取る。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki
どの競技でも独特の世界観で見る者を惹きつけるカメラマン・佐貫直哉。
佐貫がこだわるスポーツ写真のポイントとは。

 カメラマン・佐貫直哉の写真は、プレーの躍動感やスタジアムの臨場感を深く感じさせる。同じプレーを写したものであっても、他の写真には無い“力”がある。その秘密はどこにあるのだろうか。

「野球に関して言えば、ピッチングフォームにしても、バッティングフォームにしても、その選手の一番格好いい瞬間を撮るようにしています。イチロー選手やダルビッシュ選手とかもそうですけど、一流の選手というのは所作が本当に綺麗。“美”と呼んでもいいものをもっている。その美を表現したい」

 時間にして数秒の動きの中から、イメージする“瞬間”だけを切り取るからこそ、佐貫の写真は見る者を惹きつける。

バッターと同じ目線に立って……一瞬を切り取る!

 これまで多くの競技を撮影してきた佐貫が、一番思い入れを持っているスポーツ。それが、野球だ。学生時代にプレーし、今も草野球を楽しむ根っからの野球好きだからこそ、撮影できたものも多い。たとえばバッターがボールを叩くインパクトの瞬間。このとき佐貫はバッター目線でボールを見ている。

「インパクトの瞬間を撮るということは、バッターボックスに立っているのと同じなんです。ストレートと変化球ではタイミングが違うから配球も読まなくてはいけない。シャッターを押してボールが写っていなかったら、カメラマンにとっては空振りしているってことなんです(笑)」

簡単にシャッターを押さず、イメージを考え抜くことが重要。

 佐貫がシャッターを切るとき。そこには、明確なイメージやストーリーがある。「これからスポーツカメラマンを目指す人にも、その気持ちを持ってもらいたい」と言う。

「今の若い人たちは簡単にシャッターを押しすぎる。一瞬のプレーを撮るスポーツ写真でも、絵をイメージして、それから撮るというのが基本。思い通りの絵が撮れなかったからといって、すぐに消去するのではなく、なぜ失敗したのか、どうしたらイメージ通りに撮れるのかをじっくり考えることが力をつけることに繋がると思います」

写真 U-26NPB選抜対大学日本代表戦で、先発した斎藤佑樹のダイナミックなフォームを写し取る
大学卒業後、'88年に文藝春秋に入社。現在、写真部に在籍。スポーツを中心に、文藝春秋が発行する全雑誌の撮影に携わる。『Number』ではサッカー、野球など、さまざまなスポーツを撮影。野球は日本シリーズをはじめ数多くの試合を担当し、WBCで日本代表が優勝した瞬間に2度とも立ち会っている。2月には自身8回目のオリンピックとなる、バンクーバー大会の取材を控える

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