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落合博満、2年連続1票差の殿堂逃し。
~選手とジャーナリズムの離婚危機~
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2010/01/14 10:30
昨年のクライマックスシリーズで敗退し、東京ドームを去る落合監督。昨年はWBCへの参加を中日の選手が辞退したことでも波紋を呼んだ
プロ野球とメディアの関係は夫婦のようなものだ、といわれる。
ときには喧嘩もするが、どこかでお互いが支えあう。場合によっては選手がメディアとの相互関係を拒否(離婚の申し立て?)することもあるが、ユニフォームを脱げば、そんな選手もメディアの世界に入ってくることが多いのも事実だ。総じてお互い不満は持ちつつ、折り合いをつけながらの夫婦生活は続くわけだ。
そんな夫婦関係から成り立ってきたのが、記者投票による選手の表彰だった。
記者304人中77人が殿堂入りに「ノー」を突き付ける事態に。
毎年、記者投票によって選ばれる賞には、ベストナインやMVP、新人王、ゴールデン・グラブ賞などがある。一定期間以上、プロ野球の取材に携わり、選手の技量を計るにそれなりの知識と経験とを持ち合わせていると思われる記者にその投票権は与えられる。ただ、ここ最近、その投票結果に「客観性を求められる」プロの記者として「?」を投げかけられるようなことがあるのは見逃せない。
中日の落合博満監督が、2009年度の殿堂入り投票で、またも1票差で落選した。
またも、というのは昨年も落合監督は1票差で殿堂入りを逃しており、これで2年連続の1票差落選となったからだ。
プロ野球選手を対象とした野球殿堂はエキスパート部門(監督、コーチ、審判が対象)とプレーヤー部門(選手限定)の2つのカテゴリーがある。投票は東京、名古屋、大阪、福岡などの運動記者クラブに所属し、野球報道に15年以上たずさわった記者が10人連記で行なう。有効投票数の75%以上の得票があれば殿堂入りの資格を得ることになる。
今年の投票では有効投票数が304票で228票が当選必要数。落合監督には227票しか入らなかったことになる。
落合監督の実績はプロ野球史に残る驚異的なもののはず。
今回、落合監督は現役時代の実績を評価するプレーヤー部門でノミネートされた。その成績は他の候補者を圧倒するものだった。
3度の三冠王は言うまでもなく、首位打者、本塁打王、打点王各5回、最高出塁率7回など打撃タイトルを総なめして、生涯打率3割1分1厘は5000打数以上ではONより上の歴代5位……。選手としてこれだけの輝かしい実績がありながら、殿堂入りに相応しくない理由とはいったい何なのか? 正直、筆者には票を入れない理由が分からない。
漏れ伝わるところによると、今回の投票では東京の記者からはそれなりの得票があったが、それ以外の関西と名古屋からの票が少なく、特に中日のおひざ元である名古屋の記者の票がほとんど入っていなかったという。